泣けた!「はやぶさ、そうまでして君は 〜生みの親がはじめて明かすプロジェクト秘話」

「はやぶさ、そうまでして君は 〜生みの親がはじめて明かすプロジェクト秘話」(川口 淳一郎)を読みました。
著者の川口淳一郎教授は「小惑星探査機はやぶさ」のプロジェクトマネージャーです。タイトルに「生みの親がはじめて明かすプロジェクト秘話」とありますし、なんと言っても川口教授による「はやぶさ」に関する初めての著書なので、これは読むしかありません。

はやぶさ、そうまでして君は 〜生みの親がはじめて明かすプロジェクト秘話

あの日、たくさんの人が見守る中、長い旅を終えたはやぶさが地球に帰ってきました。
かたずをのんでUstreamの中継を見ていたのは昨日のことのように感じますが、早いもので半年が過ぎました。
あの動画を見ると、今でも胸いっぱいになります。

はやぶさが最後に撮った地球の写真です。

ISAS | 「はやぶさ」大気圏突入/カプセルも発見 / トピックス より

この写真の話から始まりました。

「はやぶさ」は探査機であり、ロボットです。金属とその他さまざまな樹脂でつくられ、なかにはコンピューターが搭載された、人工的な機械です。機械の仕事として見た場合、これは明らかな失敗写真であり、科学的資料的な価値はありません。
でも私は、そして「はやぶさ」のプロジェクトに携わった大勢のスタッフは、この写真を見て心が震えました。科学者としての視点を貫けば、この写真にひっかかる必要はありませんが、「はやぶさ」と過ごした7年の間に、私の心情は少しずつ変わっていきました。工学的な機械、ロボットであるのは当然ですが、「はやぶさ」にそうした科学的、合理的な世界観を超えた不思議な力を感じるようになっていったのです。
小惑星イトカワで採取したサンプルを納めたカプセルを、地球に向けて切り離した時点で、「はやぶさ」の役目は終わっています。「はやぶさ」の運命は決まっていたからです。ただの機械なら、そこで運用停止するのが当然ですが、我々の思いは違いました。
最後に、自分の目で地球を見せてやろう--。

いきなり目頭が熱くなりました。
当時、「drawr(ドロワー)」にアップされた話を聞いてジンときたものですが、本当の話だったのですね。

[drawr] すこっち - 2010-06-13 12:35:13

本当にとんだロマンチストだ・・・

「はやぶさ」に興味を持っている人ならどんなトラブルにあい、どうやって解決したか、そしてどのような最後を迎えたか、知っていると思います。
僕も知っているつもりでした。
「姿勢を制御するリアクションホイールが壊れてキセノンガスを噴射して姿勢制御した。」
僕もこの話は聞いたことがありますし、知っていました。
リアクションホイールが壊れた。じゃあ、キセノンを噴いて制御するか・・・ くらいに思っていたのですが、とんでもない。
一つ一つのトラブルがこれほど大きなもので、それを解決することがこれほど大変なことだったとは、想像を超えていました。
よくあきらめず、最後まで成し遂げたと本当に感心しました。

予定通り順風満帆でいかなかったところもあるものの、計画通り地球にサンプルを持ち帰ったことになっています。しかしこれは、僕がイメージしていたものとはほど遠く、とても確実で万全なものとは言いがたい。むしろ実現できたのは奇跡的で、死に物狂いで成し遂げたそんな印象でした。
何があっても帰還させるというその執念には感服しました。
そして、自分の抱えている問題なんて取るに足りないようなものばかり。もっとがんばらなければ・・・という気にさせられました。

この本のタイトル、どこかで見たことがあると思えば、「関係者からのメッセージ│はやぶさ、地球へ! 帰還カウントダウン」でした。
2010年4月15日「『はやぶさ』、そうまでして君は。」
ちなみにこの「関係者からのメッセージ│はやぶさ、地球へ! 帰還カウントダウン」で一番好きなのは、「はやぶさ」が帰ってきた2010年6月13日のメッセージです。
2010年6月13日「約束」
これは読むたびに泣いてしまいます。

この本は未来を担う子供たちにもぜひ読んで欲しいと思いました。