「殺人鬼フジコの衝動」(真梨 幸子)にガツンとやられたか?

「殺人鬼フジコの衝動」(真梨 幸子)を読みました。

最近、ミステリーを読んでいなかったので、何か読みたいと本屋をウロウロしていたところ、この本が目に入りました。

殺人鬼フジコの衝動(真梨 幸子)

気になったのは装丁よりも帯でした。

後味悪くて読んで後悔<<<(大なり)読まないと後悔!
9章のラストまで読んでほっ・・・と胸をなでおろし、「なかなかだったな」と本を閉じてしまった方、間違っています。
この本はあとがきまでが物語です。繰り返します。
あとがきまでが物語です。
頭をガツンと殴られたような衝撃が待っています・・・!

「あとがきまでが物語」ってどういうこと???

「後味悪くて」がちょっと気になったけど、久々にミステリーを読んでみることにしました。

ネタバレになるようなことは詳しくは書きませんが、もしまだこの本を読んでいない人で、まったく何も知らない状態で読みたい方は、ここから先は読まないでください。

後味が悪いことは覚悟していました。しかし、読んでみると後味どころか、読んでる間もイヤ〜な気分にさせられました。
でも、読んでいる時イヤな気分にさせられても、終わり方がイヤな終わり方でも、読み終わった時におもしろかった、読んでよかったと感じればいいのです。

例えば東野圭吾の「百夜行」や「幻夜」も読んでいる時はイヤな気分になりました。
主人公が関係した人がみんな不幸になっていくのですが、相手が極悪人や、理由が復讐のためなど、大義名分があればまだ納得できるところがあるかもしれません。しかし、己の都合や利益のために何の関係もない人たちを不幸に陥れることは絶対に許されません。たとえ過去にどんな不幸なことがあったとしても、それは許される理由にはならない。そう思うからです。
でもおもしろかったし、読んでよかったと思いました。

この「殺人鬼フジコの衝動」は手強かった。
「女子高生コンクリート詰め殺人事件」を思い出したりして、30ページも読まないうちに読み始めたことを後悔しはじめました。
本当に苦手なのです・・・
どうして何もしないで、そのまま受け入れる?
僕はイジメの経験がないのでよくわかりませんが、こんなものなのでしょうか?

その後も主人公の思考や行動にはイライラさせられました。
「バレなきゃいいのよ。バレなきゃ、"悪いこと"じゃないんだから」という考え方で悪事に手を染めていくのです。
自分の嫌いな考え方の主人公には感情移入できないどころか、読んでいて腹が立ってきました。
しかし、何度も犯罪を犯している人をニュースなどで見かけた時、なぜそんなことをするのか理解できないと思っていましたが、彼らも自分の置かれている場所から抜け出したくて、どうしようもなかったのかも・・・
あまりにひどい環境の中で育てばしょうがないのかも・・・
読んでいてそんなことを思ったりしました。

暗澹たる気持ちにさせられますが、読んでも読んでも一向にフジコに幸せは訪れません。
何をやっても悪い方に転がる。不幸が不幸を呼ぶ、まさに不幸のスパイラル。
もし自分がフジコの立場なら何ができたか?
学歴もなければ、資格もなにもない。
何をするにしてもお金がなくて、何もできない。

お金があったら、こんなことにはならなかったのか?
いや、そうじゃない。
その答えは最初にありました。

貧乏は、環境や社会や制度が作り出すものじゃない、どんなに社会が寛容になって貧乏をなくそうと努力しても無駄なのだ。無計画でその日暮らしでだらしなくてお調子者で変なところで散財するような人たちは、お金がどんなにあっても結局は、破綻するのだ。少ない給料でも、計画的に明日のことをちゃんと考えている真面目な人たちならば、必ず生活は向上する。要するに、貧乏は、その人の性格が作り出すんだ。

パチンコや化粧品、酒に使う金があれば、本当に生活に必要なことに使えたはずなのです。
読んでいて、えも言われぬ嫌悪感の原因が怠惰な生活だと気づいたのは、読み終わった後からでした。

恋愛観に関しても、イライラさせられましたが、ここは共感する人もいたのではないかと思います。
一言で言うと、どうしようもない男を好きになるタイプなのです。
さらに思い切り依存するタイプでもあるため、客観的に見ていると「こんなどうしようもない男、さっさと別れろよ!」「騙されていることに、いい加減気づけよ!」という「志村、うしろ〜!」気分にさせられます。
たまにこういう人の話を聞いた時、なぜそんなことをするのか理解できませんでしたが、こんなことを考えて行動していたのかもしれないと思いました。
これは友達に対する考え方にも表れていました。友達も恋愛も主従なんてない。

友達とは所詮、犬の順位付けだ。主従関係だ。どちらか片方が従に回って、はじめてその関係が成り立つ。

長々と書いてしまいましたが、女性が男性をむぐぐむぐぐぐぐ......と簡単に殺してしまえたり、リアルな話を期待している人には、あまり勧められないかもしれません。
また、どんな簡単なトリックにもひっかかる僕が気づいてしまうくらい、叙述トリックもバレバレ感がたっぷりあります。
でも、読み終わった後、おもしろいと思えればいいのです。

で、「あとがきまでが物語」ってどういうこと???
ですが、この「殺人鬼フジコの衝動」は、フジコの一生を描いた小説「蝋人形、おがくず人形」を別の作者が紹介している設定で、最初の「はしがき」と最後の「あとがき」は本文とは別の作者が書いていることになっています。
これが頭をガツンと殴られたような衝撃・・・?

内容(「BOOK」データベースより)

一家惨殺事件のただひとりの生き残りとして新たな人生を歩み始めた十一歳の少女。だが彼女の人生はいつしか狂い始めた。「人生は、薔薇色のお菓子のよう」。呟きながら、またひとり彼女は殺す。何がいたいけな少女を伝説の殺人鬼にしてしまったのか?
精緻に織り上げられた謎のタペストリ。最後の一行を読んだ時、あなたは著者が仕掛けたたくらみに戦慄し、その哀しみに慟哭する...。

Amazon.co.jp: 殺人鬼フジコの衝動 (徳間文庫): 真梨幸子: 本より

ここに書かれた「最後の一行」も気になりました。
著者が仕掛けたたくらみ?

もう一度、あとがきを読んでみましたが、それでもよくわかりません。
いや、一応、オチ的なことは書かれていますが・・・
ふと、あとがきの次のページを見た時にガツンときました!

「この作品は●●●●年に刊行されました作品を文庫化・・・」みたいなことが書かれているのかと思っていたのですが、よく見ると違いました。
ある事件について書かれた小さな新聞記事が載せられていたのですが、これが本文と大きく関係していたのです。
そうです。
これも「殺人鬼フジコの衝動」の本文の一部だったのです。

帯に書くなら「あとがきまでが物語です」じゃなくて「あとがきの次のページまでが物語です」じゃないか・・・
これ、気づいていない人、他にもいるんじゃないかな〜?

で、おもしろかったか? と聞かれると・・・
う〜ん、それほどでも・・・

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