「64(ロクヨン)」警察の話だけど、どこの組織でもあるような話

64(ロクヨン)」(横山 秀夫)を読んだ。

「64(ロクヨン)」(横山 秀夫)

クライマーズ・ハイ」を読んだのが2004年の9月なので、8年ぶりの横山秀夫になる。

「このミステリーがすごい!」や「2012週刊文春ミステリーベスト10」でも今年の1位。Amazonの評価でも今は4.5になっているが、1ヵ月ほど前までは約30件のカスタマー全員が★★★★★(5つ星)の評価だった。

ちなみにこれが「Kindle Paperwhite」で初めて読んだ本になる。

読んだ後、人に貸すこともできないし、ブックオフで売ることもできないのに、1,600円(単行本は1,995円)もするのだが、あの分厚くて重い本を持ち歩かなくてもよかったので、それほど不満はない。

D県警の広報が記者クラブと加害者の匿名問題で対立する中、警察庁長官による、時効の迫った重要未解決事件「64(ロクヨン)」視察が1週間後に決定した。
たった7日間しかない昭和64年に起きたD県警史上最悪の「翔子ちゃん誘拐殺人事件」。長官慰問を拒む遺族。当時の捜査員など64関係者に敷かれたかん口令。刑事部と警務部の鉄のカーテン。謎のメモ。長官視察の日に一体何が起きるのか?
D県警に訪れた史上最大の試練!
組織対個人を緻密に描く横山節は健在。怒涛の、衝撃の、驚愕の長編ミステリーをお楽しみに!(SY)

『64』(横山 秀夫・著) | 単行本 | 書籍情報 | 文藝春秋」より

確かにおもしろく、引き込まれた。
集中して2、3日で読んでしまった。

主人公の三上警視は、元刑事部 捜査2課で、現在は警務部の広報官。プライベートでも娘の行方不明という問題を抱えながら、職場でもいろんな問題が起こる。

刑事部と警務部。警察庁とD県警。記者クラブと広報室。上司と部下。
三上はいろんな立場で板挟みにあう。

警察の話なんだけど、読んでいると、どこの組織でもあるような話に見えてくる。
それぞれが自分の立場を守るため、どうでもいいようなことでいがみ合う。

お前ら全員、警察やろ! 何をやってる!
刑事部も警務部も関係ない、何のための警察だ!
そんな気分にさせられる。

正直、読んでいてウンザリしてきた。
三上の気持ちもわからないでもない。自分は刑事部の人間。いつかは刑事部に戻りたいという気持ちがないわけではない。でも、今は警務部の広報官。広報官の仕事を全うしたい。なのに、警務部からはまだ刑事部の人間と見られ、刑事部からは警務部の人間になってしまったと見られる。そしてそれぞれの板挟みに。

さらに、本当はやりたくないことも、自分の置かれているポジションのためにやらないければいけないこともある。
なんなんだ? これは?

そして、ようやく三上は広報官として、どうあるべきかに気づく。
長いトンネルを抜け、やっとスッキリし始めたところで、新たな展開が起こる。
現実にはちょっとムリがありそうな気がするけど、ミステリーとしてはおもしろかった。

ただ、★★★★★か?と聞かれると、う〜〜〜ん・・・ といったところ。
何を書いてもネタバレになりそうなので、当たり障りのないことしか書けなかったけど、そんな感じ。

個人的に気になったのは「D県」とか、アルファベットの地名。これはなんとかならんのかな?
どこでもいいから実在する都道府県にして欲しい。なんか読んでいて気になってしょうがなかった。