ヒュー・ハウイーのデビュー作「ウール」 ここから「サイロ」三部作は始まる。

「ウール」(ヒュー・ハウイー/雨海 弘美)を読んだ。

ウール(ヒュー・ハウイー/雨海 弘美)

上の写真の通り、上下巻に分かれている。
その上下巻を並べると表紙が一つの絵になる。これは電子書籍ではできない紙の本ならではだ。

電子書籍は便利なので好きなのだが、こういうことができたり、紙の質感が楽しめたりするので、完全に移行できずにたまに紙の本が読みたくなる。

世界が終末を迎え、人類は地下144階建てのサイロで、限りある資源を再利用しながら暮らしていた。カフェテリアのスクリーンに映る、荒涼とした外の世界。出られるのは、レンズを磨く「清掃」の時のみ。だが「清掃」に出された者が、生きて戻ることはなかった。機械工のジュリエットが、外の世界に足を踏み出すまでは?。世界を熱狂させたネット発の超大作、崩壊後の世界を生き抜く闘いをヴィヴィッドに描く!

Amazon.co.jp: ウール 上 (角川文庫): ヒュー・ハウイー, 雨海 弘美: 本」より

翻訳ものはどちらかというと苦手で、読むのが苦に感じることがある。登場人物の名前や地名に馴染みがなく、覚えにくかったり、読んでいてスッと頭に入りにくいものが多いのだが、この「ウール」はとても読みやすかった。

ただ、あまり話に抑揚がなく、最初から最後までずっとフラットな感じなので、実際のページスより長く感じた。
物語はゆっくりゆっくり進む。よく言えば丁寧に書かれているとも言えるのかもしれないが、なかなか話が進まなかった。

読み終えてみると、これだけの話にどうしてこんなにページ数が必要だったのか? と感じたほどだ。
しかも、話は中途半端な終わり方をするし、どうしてこのような生活をするようになったのかあど、明かされない謎もいくつか残ったままだ。

なんなんだ、これは?

大森望の解説を読んで、驚きの事実を2つ知った。

まず一つ目。
元々この作品はAmazonのKindleの電子書籍出版サービス「KDP(キンドル・ダイレクト・パブリッシング)」で出版されたものであること。
つまり著者のヒュー・ハウイーはこの本を個人で電子書籍で出版し、デビューしたということになる。

そして二つ目が、この「ウール」は「サイロ」三部作の第二話にあたり、第一話の「シフト」第三話の「ダスト」も出版されるということ。
調べてみると「シフト」はすでに出版されていた。

どうりで中途半端な終わり方だし、謎も残ったまんまだわ。

我々の生活とぜんぜん異なる別の文明の話なら受け入れやすいのに、今の文化や知識など近いところも多かった。これが逆に馴染みにくく感じていたのだが、おそらく「シフト」で今の我々とサイロの中の人たちがつながるのであろう。

どうしてこうなったのか、それから今後どうなるのか、気になることは山ほどあるんだけど、う〜ん、「シフト」と「ダスト」どうしよう?