会社を食い物にし、私腹を肥やすことしか考えていないヤツは許さん!

1985年8月12日、御巣鷹山に日本航空123便が墜落した「日航機墜落事故」から今年で30年。 2004年に「日航機墜落事故」を扱った「クライマーズ・ハイ」(横山 秀夫)を読みましたが、今年も何か読もうと思い、8月の中頃から「沈まぬ太陽」(山崎 豊子)を読み始めました。

「沈まぬ太陽」は全5巻で、1巻、2巻が「アフリカ篇」、3巻が「日航機墜落事故」を扱った「御巣鷹山篇」、4巻、5巻が「会長室篇」ということは知っていましたが、それ以上の詳しい話は知りませんでした。

いつものようにKindleで読んだのですが、全5巻をまとめた合本版で読みました。

沈まぬ太陽(山崎 豊子)

忙しく本を読む時間があまりなかったことや、途中で他の本を読んだりしたこともありますが、読み終わるまで1カ月以上かかりました。

Kindleの画面左下に「●% 本を読み終えるまで:●時間●分」と、今どれくらいまで読んだかわかるように設定しているのですが、この数字が読んでも読んでも進まないのです。話がおもしろくなくて退屈したわけではなく、むしろ面白くて読んでいる間は夢中になっていたのですが、本当にスゴいボリュームでした。

読んでいる人も多いと思うので、詳しくは紹介しません。もしまだ読んでいない人がいれば、ぜひ読んでいただきたいです。

強引に進める労働組合に対して、1年だけの約束で労働組合の委員長を引き受けた国民航空の社員、恩地 元(おんち はじめ)。職場環境をよくするために職務を全うしたため、経営者側と対立し、目をつけられ、理不尽な対応をされる。
無理矢理100文字ほどでまとめると、こんなストーリーです。

大好きな小説に、「オレたちバブル入行組」(池井戸 潤)の半沢直樹シリーズがあります。
読んでいると理不尽な出来事が降りかかる半沢直樹に「怒りメーター」がグングン上昇していくわけです。そして、レッドゾーンぎりぎりの状態、これ以上怒りを溜めるのは限界ってところで「倍返しだ!」で大逆転で溜飲を下げて、気分スッキリ! となるわけです。

この「沈まぬ太陽」も読んでいると、怒りメーターが上昇していきます。

己の保身しか考えていないヤツ、会社を食い物にしてるヤツ、色と欲にまみれたヤツ、私腹を肥やすことしか考えていないヤツなど、一人一人あげていくとキリがないくらいロクでもないヤツらが出てきます。そんなヤツらに、恩地は人生も家庭も崩壊させられそうになるのです。

断じて、許せん!
大逆転はまだか? と、今か今かと読んでいるのですが、これが大逆転どころか、むごい仕打ちについに「怒りメーター」は限界を突破。胃に穴が開きそうになりました。

この小説は、最初にこのように書かれています。

この作品は、多数の関係者を取材したもので、登場人物、各機関・組織なども事実に基づき、小説的に再構築したものである。但し御巣鷹山事故に関しては、一部のご遺族と関係者を実名にさせて戴いたことを明記します。

小説ですが、モデルになっている人物がいるのです。
半沢直樹はフィクションです。だからちょうどいい具合のところで、悪者を成敗してくれましたが、現実(?)はそううまくいかないようです。
うまくいかないどころか、酷い目にあわされます。「辛酸をなめる」とは、こういうことかと思い知らされました。

まさに四面楚歌といった環境の中、恩地は酷い仕打ちにも耐えていくわけですが、ようやくまともな経営者が現れ、ついに上げ続けていた溜飲を下げる時が来ました!

これを読んで感じたのは、「トップがまともな人間じゃないと、組織はダメになる」ということです。トップが腐っていると、まともな人間が潰されます。協力者も現れ、膿も出し、ようやく会社がよくなる・・・ そう思ったのですが、信じられないラストを迎え、溜飲を吐き出しました。

誰が言ってたセリフか忘れてしまったのですが、「人間にとって、やり甲斐のある仕事を与えられないことほど、辛いものはない。」という言葉が頭に残りました。

また「御巣鷹山篇」は壮絶でした。生々しい事故現場の描写に、中途半端な気持ちで読むと、やられてしまいます。あれだけの事故を起こしながら、反省もなく、利権のことばかり考えているクズどもに腸が煮えくりかえる思いをしました。

今まできっかけがなく、読んでいなかったのですが、もっと早く読んでいればよかったと思いました。