「『外食の裏側』を見抜くプロの全スキル、教えます。」を読んだ。しばらく外食できないかも...
「『外食の裏側』を見抜くプロの全スキル、教えます。」(河岸 宏和)を読んだ。
先月、中国の期限切れ鶏肉問題が話題になった。
床に落ちた肉を拾ったり、賞味期限を半年以上過ぎて変色した肉を再利用する映像をニュースで何度も観るうちに、鶏肉が食べたくなくなった人もいるのではないだろうか。
あそこまでヒドい話はないだろうが、普段自分がどのようなものを食べているのか気になっていたのでこの本を読んだのだが、想像していた以上にヒドい状況だということがわかった。
正直、2013年の産地偽装問題なんて、かわいいものだ。
知らない間に食べている「成型肉」
2005年11月、フォルクスが成型肉をステーキとして販売していたことが発覚した事件は記憶に新しい。当時「内臓肉と脂肪を混ぜ合わせて作った『成型肉』を使っていた」と報道されているのを見て、気持ち悪くなった。
それ以来「成型肉」や「やわらか加工」などと書かれている「肉」は食べないようにしていた。
ところが、この本によると、成型肉は激安ステーキ店ばかりではなく、ファミレスや持ち帰り弁当店のトンカツ、安い焼き肉店の焼肉(カルビなど)、激安食べ放題のチェーン、立ち食いそばの安いカツ丼や激安カレー店のカツカレーなどにも使われているらしい。
丼やカレーの上にのっているのは「ロースカツ」と思い込んで食べている人が大勢いるが、あれはロースでも何でもなく、成型肉だそうだ。
カツ丼やカツカレーは食べるので、おそらく知らない間に食べてしまっているだろう。もうカツ丼も、カツカレーも、信用できる店でしか食べないようにしようと思った。
この本では、このような「外食の裏側」がたくさん紹介されている。
知らない間に食べている「輸入野菜」
日本の食料自給率は4割以下。残りの6割の輸入品はどこに行くのだろう?
確かにスーパーに行くと、卵、牛乳、米はほぼ100%国産だ。野菜は9割以上が国産品。魚や肉も8割が国産だ。
では、輸入食材は、いったいどこに行っているのか?
その答えが、外食、中食(調理済みの食品)だ。
「安い」「量が確保できる」「スーパーでは売れない外国産が回ってくる」という理由で、外食・中食が輸入食材を多用している。
その結果、日ごろの食材選びでは外国産を避けているつもりでも、外食をするとき、知らない間に輸入野菜を食べてしまっている。
カツ丼や、カツカレーなら、なんとかなるかもしれないけど、野菜はどうしようもない・・・
さらに見分けるのが難しいのが「ニセモノ食品」だ。
コストを下げるために、さまざまな「混ぜもの」を入れられた「ニセモノ食品」
コストを下げるために、本物にさまざまな「混ぜもの」を入れて本物のように売っている「ニセモノ食品」というものがあるらしい。
わかりやすい例がドリアなどによく使われている「チーズフード」というニセモノチーズで、プロセスチーズ、ナチュラルチーズを溶かして、小麦粉に加えて「乳化剤」「香料」などを混ぜて固めたものだ。
チーズだと思って食べているが、水っぽくて薄く、チーズ本来のうまみも風味もどこにも残っていない。おそらくこれも知らない間に食べているのだろう。どうしてわざわざ、そんなマズいものを食べさせられなくてはいけないのか、怒りを感じた。
では、なぜ日本の外食がニセモノ食品の「宝庫」となっているのか。
外食店で「ニセモノ食品」が横行する理由
理由のひとつは、外食店にはJAS法等の法律が適用されないかららしい。
食品をスーパーなどで販売するときは、原材料(使用した添加物も含む)、賞味期限、消費期限を表示しなければいけないが、外食店でその場でつくって提供するときはその法律が適用されないのだ。
外食店の法律というのは、簡単にいってしまえば、「食中毒を出さなければいい」というものでしかないらしい。
確かに、メニューに「原材料」を全部載せなければいけないルールができてしまうと、街の洋食屋さんや中華料理屋さん、うどん屋さんなど、対応できなくなってしまう店も多いだろう。
ただ、載せなくてもよいことに、ニセモノ食品を使う店がいることも事実で、なんとかできないものかと思った。
さらにJAS法の矛盾をついた話があった。
おかしくないか? 外食のルール
そばも「ニセモノ食品」の代表例だそうだ。
そばは本来、そば粉100%で打つものだったが、今はそば粉に小麦粉を混ぜて打つことが当たり前となっている。その理由は、輸入の小麦粉のほうが、そば粉よりも断然安いからだ。
そばを乾麺の状態で売るときは、「最低そば粉を3割は入れなくてはいけない」と法律で定められている。なのに、立ち食いそばなどでは、そば粉が1割、2割の「そば」を出している。
JAS法等の法律には引っかからないから、外食店では問題ないって、おかしくないか?
ルールを変える必要があるのではないかと思った。
「卵黄」が入っていないコンビニの卵サンド
工場やセントラルキッチンで加熱調理・半調理され、各店舗では温めるだけ、炒めるだけ、揚げるだけのワンクックの状態、あるいは盛り付けるだけの状態で運ばれてくる「仕入れ品」だが、いまの外食産業は仕入れ品なしでは成立しない。
そんな「仕入れ品」には具体的にはどんなものがあるのか、紹介してあったが、その中の一つ「卵」がインパクトあった。
コンビニの卵サンドには「卵黄」が使われていないものがあるらしい。
卵を「卵白」と「卵黄」に分けて流通させようとすると、お菓子などに使われる卵黄のほうがニーズが高く、卵白は余りがち。かといって、廃棄するのはもったいない。そこで、余った卵白はどうするか。
余った卵白を安く仕入れて黄色く着色し、あたかも黄身に見えるように加工しているらしい・・・
ちなみに、食べてみると卵のおいしさはまったくないそうな。
なんか気持ち悪い・・・
本物の黄身かどうかの見分け方も載っていた。
「黄身」(に見える部分)を指でつぶすと、本物の黄身ならやわらかく、簡単に均一につぶれるが、「黄身に偽装した」白身なら、つぶそうとすると弾力があってつぶれにくいらしい。
「安さ」と「安全」
この他にもいろいろ「外食の裏側」について書かれている。
ハッキリ言って、これを読むと、しばらく外食できなくなる人もいるかもしれない。
でも、こんな店ばかりではないし、よい店もある。
この本を読んで、次に外食するとき、よく店を見て、店を選んで、よい店で食べよう。
そうなればよいのではないかと思った。
しかし、いつから、どうしてこうのようなお客さんを見ない店が増えてしまったのだろうか。
著者の河岸宏和は、いまの外食で最も優先されているのは「安さ」と「安全」で、安くて安全なら「味」は二の次でいいと指摘する。
「安さ」と「安全」を優先するあまり、「おいしさ」「機能」(栄養や嗜好を満たすなど、食べる人が得られるメリット全般のこと)が抜け落ちてしまっていると。
どうすれば、外食が変わるのか、その答えはこれだろう。
かつて外食は、家でつくれない特別なご馳走、本当においしいもの、あるいは家でマネしてつくりたいもの、そういうものを食べに行く場所でした。
いまの外食は、たしかに安いし、便利だ。しかし、そこに家庭ではできない特別なおいしさや、喜びはあるのか?
我々が外食に求めるものを変えていかなければならないのだろう。
おすすめする店
外食はすべてダメなのか? というと、もちろんそういうわけではない。全国展開・チェーン店からおすすめする店が紹介されていた。(2014年4月時点)
- カレーハウス CoCo壱番屋(カレー)
- ロイヤルホスト(ファミレス)
- 吉野家(牛丼)
- 大戸屋(定食)
- サルヴァトーレ・クオモ(イタリア料理)
- 餃子の王将、バーミヤン(餃子・中華)
- がってん寿司、スシロー(回転寿司)
- 丸亀製麺(うどん)
- 和幸(トンカツ)
- ケンタッキーフライドチキン、サブウェイ、ミスタードーナツ(ファストフード)
- スターバックス(コーヒー)
- 神戸屋、ドンク(ベーカリー)
それぞれの理由も書かれている。
例えば、「定食」の場合。
各店舗でできるだけ手作りしているかどうかが最大のポイントで、全国チェーン店では、なんといっても「大戸屋」が群を抜いているそうだ。
セントラルキッチンを採用せず、店の厨房で料理することを方針にしていて、大根おろしも注文を受けてからすりおろす。各店舗でつくる手作り豆腐も非常においしい。かつおぶしも店内で削って出している。
手を抜かず、一つひとつ手づくりをして出すという姿勢が徹底していて、安心して食べられる店とのことなので、ぜひ一度食べに行ってみたいと思った。
個人店のおいしいお店を探すコツも載っているので、こちらもお店選びの参考になるだろう。