「とんび」を読んで、エンペラー吉田と幸せについて考える

2013年1月13日から、TBSテレビ日曜劇場でドラマ「とんび」が始まった。
最近、あまりドラマは観ないのだが、観てみると結構おもしろかった。

そんな時、たまたま「Kindleストア」を眺めていたら、Kindle版「とんび」(重松 清)があったので、サンプルをダウンロードしてみた。

とんび(重松 清)

最初の10ページほどだろうか? ダウンロードしたサンプルをさっそく読んでみると、これがまたおもしろい。
すぐに購入した。

オススメだか新作だか覚えていないが、Kindleに出てきた本をたまたま見つけて、サンプルを読んで、購入して、すぐに読み始める。
これらがベッドの中でできてしまう「Kindle Paperwhite」は本当に便利だ。

あらすじはこんな感じだ。

昭和三十七年、ヤスさんは生涯最高の喜びに包まれていた。愛妻の美佐子さんとのあいだに待望の長男アキラが誕生し、家族三人の幸せを噛みしめる日々。しかしその団らんは、突然の悲劇によって奪われてしまう―。
アキラへの愛あまって、時に暴走し時に途方に暮れるヤスさん。我が子の幸せだけをひたむきに願い続けた不器用な父親の姿を通して、いつの世も変わることのない不滅の情を描く。魂ふるえる、父と息子の物語。

Amazon.co.jp: とんび (角川文庫): 重松 清: 本」より

瀬戸内海に面した広島の備後市で運送会社に勤めるヤスさんとその息子アキラの話だ。
ちなみに読んだ後で調べてみたが、広島県には備後市はなく、架空の市のようだ。

何がよかったかと言えば、イヤな人が出てこない。
みんないい人ばかりなのだ。
そんないい人達の中で愛され、大切に育てられたアキラも本当にいい子だ。
誰が読んでもイヤな気分にさせられないだろう。

読んでいて何度かホロリとさせられたが、特に海雲和尚の存在は大きかった。
そこにいるだけで空気が変わるような、大きな背中の父親といった海雲和尚は多くは語らないが、何かあれば誰にでもわかる言葉で話す。そしてその言葉は聞いた人の中にいつまでも残る。

海になれ。
遠い昔、海雲和尚に言われたのだ。
子どもの悲しさを呑み込み、子どもの寂しさを呑み込む、海になれ。
なれたのかどうかはわからない。それでも、その言葉を忘れたことはない。

海雲和尚に「海になれ」と言われたヤスさん。
この言葉は僕の心にも残った。

ヤスさんの言葉にも印象に残ったものがある。

「幸せになりんさい。金持ちにならんでもええ、偉いひとにならんでもええ。今日一日が幸せじゃった思えるような毎日を送りんさい。明日が来るんを楽しみにできるような生き方をしんさい。親が子どもに思うことは、みんな同じじゃ、それだけなんじゃ」

これを読んでいて、30年ほど前にやっていたテレビ番組「天才・たけしの元気が出るテレビ!!」を思い出した。

「天才・たけしの元気が出るテレビ!!」からは一般人もデビューしたが、その中の一人にエンペラー吉田がいた。
当時は、話している途中に入れ歯がはずれるのがおもしろく、毎回毎回「偉くなくとも正しく生きる」と同じことを言っていたので、おもしろい爺さんだと思っていた。

「偉くなくとも正しく生きる」
当時はぜんぜん気がつかなかったけど、今あらためて見たら、いいこと言ってたんだと思った・・・

金持ちにならんでもええ、偉いひとにならんでもええ。今日一日が幸せじゃった思えるような毎日を送りんさい。明日が来るんを楽しみにできるような生き方をしんさい。

幸せっていったいなんだろう?
どうすれば幸せだったと思えるんだろうか?
そんなことを考えさせられた。