これからリードナーチャリングを始める方に「Web来訪者を顧客に育てる リードナーチャリング」

「Web来訪者を顧客に育てる リードナーチャリング」(上島 千鶴、古賀 雅隆)を読みました。

これは2年前に出版された本です。
当時読もうと思っていたのですが、店頭で見かけることがなく、なんとなく買うタイミング逃してしまい、そのままになっていました。

「Web来訪者を顧客に育てる リードナーチャリング」(上島 千鶴、古賀 雅隆)

「リードナーチャリング」は一般的な用語なのでしょうか?
「リード」(見込み客)は使われていますが、私のまわりでは「リードナーチャリング」はあまり使われていません。

見込み客に対して、アプローチを段階的に行い、徐々に購入意識を育てていくこと。BtoB分野では購買の意思決定において時間がかかり、集団で決断する傾向が強いため、見込み客との中長期的な関係作りが重要となっている。また、BtoC分野においてもマンション購入やウェディングなど、高額な取引や慎重に検討するサービスにおいてよく使われる。

MarkeZineより

Webマーケティングについて、業務に携わっている人や、ある程度理解している人が読むと、ちょっと物足りないかもしれません。
これから始める人、まだよくわかっていない人には最適な本ではないかと思います。

私は読んでみて、できていないことに気づかされたり、もう一度見直そうと思ったことはいくつかありましたが、それ以上のものを得ることはできませんでした。

90年代半ばからの企業サイトの変遷をたどるところからこの本は始まるのですが、2000年あたりの説明を見て、もう思い出すことはないと思っていた私の中の恥ずかしい記憶が蘇ってきました。

「インターネット博覧会 楽網楽座(英語名:Internet Fair 2001 Japan、通称:インパク)」が催され、Webサイトの利用浸透に一役買った時期がこの頃に当たる。

インパク、懐かしい・・・

以下は、自分用のメモ。

  • 今までの企業マーケティングは、以下のように顧客の行動パターンとはつながりのない、企業都合の中途半端なスタイルだったとも言える。
    • 縦割り組織による単発マーケティング
    • 問い合わせた顧客だけを潜在顧客として対応
    • 集めたリード顧客への一方的な情報提供
    今後はどのようなマーケティング施策やコンテンツ施策が、どのタイミングで必要なのか、サイトへの顧客の反応を見ながらナーチャリングしていくという新しいマーケティングを考える必要が出てくる。(P38)
  • 組織が縦割りの状態でWebサイトが存在すると、以下のような様々な障害が発生する。
    • 部門単位で制作・運用するため企業としてのブランド統一感に欠ける
    • 各業務がルーチン化することによって目的を失う
    • 各マーケティング施策が「単発花火」となり営業プロセスとしてつながらない
    • 企業視点でのマーケティングに陥り、顧客視点で考えられていない(P68)
  • 商品に全く興味のないユーザに対して、スペック情報を提示したところでなんら効果を上げられないということは容易に想像できるだろう。ここでは「興味」「関心」「比較検討」「行動」という四つの段階にわけて、それぞれ必要なコンテンツを挙げる。
    「情報配信型サイト」におけるコンテンツ要素
    1. 認知段階:問題提起、サービスメリットの訴求
    2. 関心段階:サービス一覧、導入事例、お客様の声
    3. 比較検討段階:サービス詳細、導入実績、FAQ
    4. 行動段階:問い合わせ・資料請求フォーム、営業担当者の連絡先(Tel・Fax1番号など)(P80)
  • 顧客との関係構築の方法は、口コミサイトやSNSなどのCGMを使って囲い込みを行い、その顧客に対してだけ、各種の優待サービスやお得な情報を提供するという内容が多い。この方法に異論はないが、エンゲージメント=CGMと早合点しない方がよい。某企業では、企業からの一方的な情報提供のための会員サイトを、CGMサイトに置き換えた。しかし、「さぁ、自由に書き込んで下さい」と言われても、既存顧客は突然の変更に戸惑う。結局、サクラと化した社員がダミーで書き込みを行うことになり、
    • 誰も見ない
    • 誰も読まない
    • 誰にも使われない
    というCGMが山のように出来上がっている。(P136)
  • インターネットの世界では、個人が日々人に伝えたいことを書き込むためのソーシャルメディア、リアルの世界ではライフスタイル別の「集まり」や「催し物」「団体別の活動内容」を把握し、それぞれに対して新しいマーケティング活動を行うことが必要となる。会員向けのSNSサイトのように閉鎖的な環境を企業側が用意して作り、コミュニケーションをコントロールする時代は終わったと考えるべきである。(P137)
  • 様々なプロモーションや、集めた顧客リストの鮮度は、整理・更新していかない限り古くなる。特にBtoBの場合は、人事異動、組織変更、離職などのサイクルが早く、営業現場で名刺交換をしても、その名刺データは1年後には古い情報となりかねない。また、各メディアやチャネルから集めた顧客は、データの整合性を取るためにデータクリーニング(顧客データを整理すること)も必要となる。(P154)
  • 商材が非耐久消費財であるなら、ユーザは「比較検討」というプロセスを経ないケースもあるため、来訪者をそのままコンバージョンページへ誘導させることが望ましい。特に、商品単価が低いほど衝動買いの発生する確率も高くなるため、「一度のアクセスでいかにクロージングできるか」がポイントになってくる。
    しかし、耐久消費財やBtoBの商品については、複数のメーカや商品から候補を絞り込んでいくというプロセスが大前提となるため、必ずしも一度のアクセスではコンバージョンに結びつかない。従って、自社商品の魅力やスペックをうるさくアピールしすぎるよりも、他社の情報も閲覧するということを前提にしたコンテンツを提供することが望ましい。具体的には、「比較検討の仕方」や「商品・サービスを評価する際のポイント」「他社との違い」といったものが考えられる。(P167)
  • 企業規模が大きくなると、Webサイトに掲載されるコンテンツの管理は各部門に移管されることが多いため、統一化を図ることが困難になってくる。
    分業体制でコンテンツを管理・運営すること自体は問題ないが、統括・チェックする部門がなければ部門毎にバラバラなWebサイトになってしまう。
    特に、コンテンツの管理費用を各部門の予算から捻出している場合、この傾向が顕著になる。確かに、「あなたの部門で立ち上げたコンテンツは、問題があるので修正して下さい。ただし、費用はあなたの部門で負担して下さい」と言われても、コンセンサスが得られるわけがない。
    このような問題を回避するためには、分業の名の下にコンテンツ管理を各部門に丸投げすることは避け、全社的にWebサイトを統治する「Webガバナンス」を整備する必要がある。Webサイトの統治と言っても、各部門でコンテンツを作成することを否定するものではない。むしろ、コンテンツはそれぞれの専門部署で作成・更新することが望ましい。ただし、それらを自由勝手に任せるのではなく、ガイドラインに添った運用を順守し、最終的にリリースする前に広報部など統治・管理する部門が公開の可否をチェックするという仕組みが必要になる。Webガバナンスの整理により、CIとユーザビリティを確保したWebサイトを構築・運営することが可能となる。(P171)
  • Webサイトから問い合わせのあった顧客やイベント会場や展示会で集めた名刺は、基本的に営業部門に引き継がれてその後のフォローが行われるが、1ヵ月以内に契約まで至る件数は1%に満たない。しかし、多くの企業では営業効率を重視するあまり、ホットではない(すぐに購入・導入に至らなさそうな)リードに対するフォローは、ほとんど行われていないのが実情である。では、ここでホットなリードと見なされなかった顧客情報はどうなるのかというと、各営業担当者の名刺フォルダやメールソフトのアドレス帳の中にしまわれたまま、陽の目を見ることなく放置されることになる。SFAツールを導入している企業における取り組みを見てみても、メールマガジンやイベントなどの案内状送付先として利用される程度である。(P174)
  • リアルマーケティングとネットマーケティングを分けて考えないこと。部門毎に独立したマーケティングを実施したり、ネット推進部(ネット)と営業部(リアル)が連携をとらず、それぞれ異なる施策を実行していては、企業としての効果が薄れるばかりか、互いに足を引っ張り合って効果を相殺する可能性もある。企業として一体感のあるマーケティング活動を行うべきである。(P177)
  • 「オーナーの声」といったコンテンツにサクラを仕込んだり、自社の商品だけに有利な(あるいは不利な情報を隠蔽した)コンテンツを提供したりすることは避けなければならない。今や個人が積極的に情報発信する時代であるため、作為的な施策はユーザの批判を買い、ブログなどを通じて流布される。企業イメージを大きく損なうばかりか、最悪、不買運動などにも展開する可能性が高い。口コミの力を過小評価することなく、誠実さをもって運用する必要がある。(P178)
  • 商品・サービスにブランド力があり、独自ドメインで運用しているサイトは多くある。しかし、ブランド力がないにも関わらず、製品単位で独自ドメインを立ち上げているケースも数多く見受けられる。サイト数が多いほど、運用は煩雑化し、CIガイドラインや運用ガイドラインを制定しても、年々ルールが守られなくなる傾向がある。最近は、このような事態を反省し、ドメインを整理しようとする動きが見られる。(P181)
  • Webサイトでは、水面下の顧客の行動が直接目に見えないことから、どの部署もあまり関心がない。問い合わせや資料請求、電話での問い合わせなど、顧客が何かアクションを取ったことで、やっとそこに顧客がいることが分かる世界である。しかし、リアルマーケティングにおいても、展示会やセミナー会場では顔が見える顧客も、その場を離れれば、顧客からの自発的なアクションがない限り、状況を知るすべはない。定期的なアウトバンドコールやメールマガジンの発行などで、顧客の状況を把握している企業もあるが、一時の興味だけで来場した客にとっては、迷惑な行為となる。(P198)
  • 商品開発、マーケティング、広報宣伝、販売促進、ネット推進、営業、各店舗など、ナーチャリング活動を行う上で関連する部署は多数存在する。しかし、日本企業におけるマーケティング部門は、Webサイトの運用部門、または媒体広告部門、場合によってはマス調査だけなど、部分的なミッションしか与えられていないことが多い。場合によっては、ルーチンワーク化した実務を行うことで精一杯という状況に陥っている。よって、本来のマーケティング組織とは、ほど遠い存在と言えよう。(P199)
  • リードナーチャリングを本格的に行う際には、CMO(最高マーケティング責任者:Chief Marketing Officer)ポストを新たに設置または任命し、マスマーケティングではなく、リードナーチャリング活動を行うためのマーケティング組織や耐性を立ち上げるべきだと考える。特に、営業部や販売店など顧客と直接接し、受注や契約に結びつく組織とは強い連携が必要となることから、これらの組織をまたぎ、かつ関係する関連部署との横串体制を構築するのが望ましい。(P200)
  • リードナーチャリング活動を行うということは、水面下の顧客の動きを数値化し、攻めるべき顧客を抽出し、マーケティング手段を最適化することに等しい。よって、一部の組織が部分的に始めるのではなく、経営戦略部門直轄のトップダウン形式でナーチャリング活動のPD(S)CA体制を作ることを強く勧める。(P201)