「佐藤可士和の超整理術」で問題可決!
「佐藤可士和の超整理術」(佐藤 可士和)を読みました。
この本は2007年に単行本で出版されたのですが、当時読もうかと思いつつ買うタイミングを逃してしまい、今年2011年に文庫化されたので読んでみました。
まず、「アートディレクター」について、このように書かれています。
アートディレクターの一般的な定義というのは、"広告などにおいてグラフィックを企画立案し、かたちにしていく総合的な監督"といった感じでしょうか。僕は、その定義を徐々に拡大解釈しているところです。グラフィック媒体にとどまらず、CF、空間、パッケージと、仕事の領域をどんどん広げています。近年では広告のみならず、商品開発から企業や教育機関のブランディングにまで携わるようになりました。
ですから、僕が行っていることは、"コミュニケーション戦略を総合的に立案し、デザインの力で目に見えるかたちにしていく仕事"なのです。一見アーティスティックに自己表現をしているのではと思われがちですが、実はドクターのようにクライアントを診察し、問題を解決していくといったほうがふさわしいのです。
アーティスティックに自己表現をしているのではなく、ドクターのようにクライアントを診察し、問題を解決していく。これがこの本の根幹で、このことは何度もでてきます。
そして、次に「アートディレクション」について、このように書かれています。
このように、僕の考えるアートディレクションは、自己表現が原動力ではありません。「いろいろなジャンルのプロジェクトを数多く手がけていて、アイデアが尽きることはないのですか?」。こう聞かれることも多いのですが、その心配は全くありません。なぜなら、答えはいつも、自分ではなく相手のなかにあるからです。それを引き出すために、相手の思いを整理するということが、すごく重要になってくるのです。
やはりここでも自己表現ではなく、相手(クライアント)の中にある答えを引き出すことが重要だと書かれています。
そしてそのために次の3つのプロセスで整理を行っていくそうです。
- 状況把握/対象(クライアント)を問診して、現状に関する情報を得る。
- 視点導入/情報に、ある視点を持ち込んで並べ替え、問題の本質を突き止める。
- 課題設定/問題解決のために、クリアすべき課題を設定する。
そしていよいよ整理術の話に入っていくわけですが、整理術についても三つのレベルに分けて、説明されています。
- 空間の整理
整理するには、プライオリティをつけることが大切 - 情報の整理
プライオリティをつけるためには、視点の導入が不可欠 - 思考の整理
視点を導入するためには、まず思考の情報化を
具体的な事例を挙げて、これらが説明されるのですが、何しろ話のスケールが大きい。
佐藤可士和さんのことをご存じの方なら今まで何度も耳にしたことがある「ステップワゴン」「極生」「明治学院大学」「国立新美術館」「N702iD」「今治タオル」「ファーストリテイリング」などなどの話が出てきます。
「ユニクロ」のロゴを考える仕事なんてこね〜よ!
と思われるかもしれません。
確かに僕もそんな仕事することはないでしょう。
でも、この本で書かれていることの本質はそこではないのです。
物事の問題を整理し、どのように解決していくか、そこにあるのです。
確かに読んでいると、文字数の関係で「依頼が来て、ちょっと考えたら問題に気づき、あっという間に問題解決! さらに大ヒットで成功しました。」みたいなマンガみたいな展開ばかりなので、ついていけないと「ポカ〜〜〜ン・・・」となってしまいそうですが・・・
仕事の種類や規模などに関係なく、参考になることは多いと思います。
さて、タイトルになっている整理術については? と聞かれると・・・
カバンの中身を整理する話では「カバンは持ち歩かず(手ぶら)、持ち物は携帯電話、自宅の鍵、カードケース、小銭だけ」など、なかなか普通の人にはマネできないようなこともあったりして、おもしろいものもあります。でも、すでに整理術の本を2、3冊読んでいるような人には、参考になることはあまりないかもしれません。
個人的に「なるほど」と感じたのは、やはりここかな?
相手のなかに必ず答えはありますから、何度もキャッチボールを繰り返しているうちに、だんだん「これが言いたかったのか」というポイントが見えてくる。次第にピントが合ってきますから、躊躇せずにぜひトライしてみてください。