たかが洗剤、されど洗剤「世界で最もイノベーティブな洗剤会社 メソッド革命」
「世界で最もイノベーティブな洗剤会社 メソッド革命」(エリック・ライアン、アダム・ローリー/須川 綾子)を読みました。
僕はこだわりを持って作られた製品が好きです。
例えば、iPhone 5。
まず、箱を手にした時に最初の感動を覚えます。
綺麗なパッケージ。箱を開けてみると、隙間ひとつなくピッタリというより、ピッチリ収まったiPhone。
本体がプチプチで包まれているなんてことはありません。
箱を揺すった時、付属のケーブル類がガタガタすることなんてありません。
箱から取り出してみて、背面をよく見ると、ガラスがアルミニウムがつなぎ目も段差もなく、まるで一体成型のようにできています。
アルミニウム製のボディを2台の超解像度のカメラで撮影し、725種類のガラス部分と照合して、一つひとつのiPhoneに最も精密に適合するガラスをはめ込んでいるのです。
わざわざそんな手間も時間も費用もかけなくても・・・と普通のメーカーなら思うでしょう。でも、さわった時のフィット感にそこまでこだわって作られているので、手に取った人は、あの触り心地に感動するのです。
メーカーの人なら一度は「あんなこだわった製品を作ってみたい」と思うのではないでしょうか?
「でもiPhoneやMacのように単価の高い製品だから実現できるんだよ」
僕もそう思っていました。
でも、洗剤やハンドソープみたいな単価の安い製品でもこだわって作っているメーカーがあることを知りました。
このボトルを見てください。
アメリカの「Method」(メソッド)のハンドソープです。
綺麗!
うちの洗面台に置いてみたい。
使うのが楽しくなりそう。
「でも、確かに見た目はいいけど、こういうのって中身がイマイチなものが多いんだよね」
いえいえ、メソッドはデザインだけでなく、使う人にも、環境にも、動物にも配慮しているブランドなのです。
メソッドからの5つの約束
オフィシャルサイトに書かれた「メソッドからの5つの約束」を見れば、よくわかります。
メソッドからの5つの約束
「メソッドってどんなブランドなの?」と聞かれると説明に困ることもあります。それはメソッドがいくつものゴールを同時に達成しようとしているからです。洗浄・安全・環境・デザイン・香り。その全てにおいて妥協しない、そんなブランドがメソッドです。「そんなことできるの?」と思われるかもしれません。しかし、メソッドはこれら全てを提供するために生まれたのです。
「メソッドについて | メソッド」より
洗浄・安全・環境・デザイン・香り。その全てにおいて妥協しない。
だから、デザインだけで中身はイマイチだとか、環境にはよいけど洗浄力が弱いとか、そんな製品はないのです。
メソッドが他の会社と違うところ
この「世界で最もイノベーティブな洗剤会社 メソッド革命」には、起業してから成功までの道のりや、その土台となる「七つのこだわり」について書かれています。
読んでみると、一つ一つはそれほどたいしたことじゃなかったり、よくある話や、「うちの会社でも同じようなことやってる」みたいな話も出てきます。
でも、これらを徹底して全部やろうとすると、それは簡単な話ではありません。
根本的に他の会社と大きく違うところは、社員一人一人の考え方や意識、心構えみたいなところにあるんじゃないかと思いました。
人は仕事をもっていることに喜びを感じるものだが、とりわけ大きな喜びを感じるのは、価値ある仕事に取り組み、達成感を得たときだ。洗濯洗剤だろうと、クリーナーシートだろうと、トイレクリーナーだろうと、僕たちが製品について話し合うとき、考えることはいつも同じである−−どうしたらビジネスを通して社会に前向きな変化を起こすことができるか。
これってAppleに関する本を読んでいてもよく目にしました。
スティーブ・ジョブズの場合は、人間を前進させる、世界を変えることまで考えていたようで、「Think Simple―アップルを生みだす熱狂的哲学」にこう書かれていました。
「人間を前進させることは、単にすばらしいものを発明することよりもはるかに価値がある。スティーブのビジョンは革新につぐ革新を生みだしたが、あきらかに彼の目はもっと高いところを見ていた。まさしく世界をよいほうに変えることのできる製品を作りだすアップルを見ていたのだ。」
「どんな製品を作れば売れるか?」だとか、「どうすればよく売れるか?」だとか、考えているのではなく、「どうすれば社会が変わるか?」「どうすれば世界が変わるか?」を考えているのです。
自分の会社のカルチャーに魅力を感じるか?
この本を読んで感銘を受けたのが「イノベーションをもたらすにはカルチャーが必要」という話です。
ザックリ簡単に5行にまとめると・・・
今の時代、ビジネスの成功はブランド力と製品力にかかってるが、これらを実現するには、企業文化をつくりあげるしかない。そして、カルチャーが魅力的なら、有能な社員が集まるし、顧客に感動を与える。また、企業秘密は盗まれたり、マネをされるかもしれないが、カルチャーは盗むことができない。
という話です。たぶん。
本の最初の「はじめに」にもこのように書かれていました。
「(この本を書くことによって)アイディアを盗まれて、真似されることは心配していません。みなさんを信頼していますし、そもそも、僕らのこだわりを実践するのはなかなか難しいのです。」
ふと、自分の勤めている会社のカルチャーって?と考えてしまいました。
最後に
この本はどんな立場の人にオススメか?と聞かれると・・・
本の説明に「楽しい企業文化、デザインへのこだわり、多くの熱狂的ファンの獲得など、その成功をもたらした独自の経営哲学を創業者みずからが明かす!」と書いてあったので、読む前は経営者向けなのかな? と思っていたのですが、経営者はもちろん、企画開発の担当をしている人やデザイナー、広告宣伝やCRM担当の人が読んでも参考になるんじゃないかなと思いました。
中にはアメリカだからできるけど日本にはあわないような話も出てきますし、全部が全部参考になるわけじゃないけど、もっとできることがある、もっと楽しんでやってみよう。そんな気持ちにさせられました。