「そして父になる」子供のいる男の人に読んでもらいたい

「そして父になる」(是枝 裕和、佐野 晶)を読んだ。

そして父になる(是枝 裕和、佐野 晶)

これは、第66回カンヌ映画祭 審査員特別賞を受賞した映画『そして父になる』のノベライズ本だ。それも映画の監督・脚本・編集まで行った是枝裕和監督自身によって小説化されているので、「映画とイメージが違う」なんてことはない・・・ はずだ。なんせ、まだ映画を観てないもので・・・

大手建設会社の三嵜建設に勤める良多は、都市のランドマークとなる大規模な建築物を手がける花形部署、建築設計本部のトップに立ち、三十階建ての高級マンションに住まい、高級車に乗る、いわゆる勝ち組だ。お受験塾に通う一人息子の慶多は、成華学院初等部に入ることが決まり、順風満帆な人生を過ごしていた。

そんなある日、病院からの連絡で、慶多が生まれた時に病院で取り違えられていたことがわかる。
本当の息子は、群馬県の前橋で電器屋を営む雄大の三人兄弟の長男、琉晴として育てられていた。

血を選ぶのか?
6年間、共に過ごした時間を選ぶのか?

ストーリーはこのまんまだが、映画の予告編動画を観た方がイメージしやすいかも。

「エリートで金持ち」と「それなりで庶民派」の対比を描いた話かと思いきや、それだけではなかった。

良多は土日もほとんど仕事に明け暮れ、育児もほとんど妻のみどり任せだったが、この取り違え事件をきっかけに、慶多に対して自分がそれまでほとんど父親らしいことをしていなかったことに気づく。
そして、良多は父になってゆく・・・

普段、仕事が忙しいことを理由に、家庭のことをほったらかしている人には耳が痛い話だろう。

この本を読む人は、血を選ぶか、共に過ごした時間ぶか、自分ならどちらを選ぶか考えながら読むと思う。
僕もいろいろ考えたが、良多の選んだ答えとは違った。

あまり詳しく書くとネタバレになってしまうので、これ以上は書かないが、この結末は映画や小説だから可能であって、現実はもっと厳しいのではないかと思った。

子供は親を選べないし、家の環境で生活が大きく変わる。だから、このような取り違えが起こると、親も辛いが、一番辛い思いをするのは子供自身だろう。