かつて「川口浩探検隊」を観ていた大人へ「幻獣ムベンベを追え」でワクワクしよう!

子供の頃、好きだったテレビ番組に、水曜スペシャル「川口浩 探検シリーズ」がある。川口浩率いる探検隊が世界中の未知の生物などを探して探検する冒険エンターテイメントだ。

水曜スペシャル 川口浩 探検シリーズ ~未確認生物編~

「川口浩 探検シリーズ」ではなく、みんな「川口浩探検隊」と呼んでいた。

正確な視聴率は知らないが、あの当時まわりの友達はみんな観ていたように思う。

水曜スペシャル「川口浩 探検シリーズ」 川口浩探検隊『古代恐竜魚ガーギラス』

今見ると、いかにも昭和な雰囲気がプンプンするこの独特の字体。でも、当時はこのタイトルを見てワクワクしたものだ。

観たことがない人は、この動画を観て欲しい。約10分のダイジェストだが、だいたいの雰囲気は理解してもらえると思う。

子供の頃はワクワクして観ていた「川口浩探検隊」も、歳とともにだんだん「あれ? これホンモノ?」と疑問を持つようになり、楽しめなくなっていった。

子供の頃、憧れた探検。大人になってもその夢を失わなかった若者がいた。

コンゴの奥地に棲息する謎の怪獣「モケーレ・ムベンベ」

「幻獣ムベンベを追え」(高野 秀行)を読んだ。
これはコンゴの奥地の湖、テレ湖に太古の昔から棲息するという謎の怪獣「モケーレ・ムベンベ」を探すため、早稲田大学探検部の11人がジャングルを探検した78日間の体験記だ。

幻獣ムベンベを追え(高野 秀行)

この話は1988年の話なので、コンゴ民主共和国(当時、ザイール共和国)ではなく、コンゴ共和国(当時、コンゴ人民共和国)の話になる。

当時、コンゴは日本と国交がなく、お互いに大使館もなかった。それどころか、民間レベルでの交流も全くなかったらしく、コンゴには日本の商社が一つもなく、コンゴをフィールドとする動物学者・人類学の日本人研究者もいなかったらしい。だから入国するのも難しかったようだ。

またインターネットが利用できなかった時代なので、情報収集も困難で、あちこちの図書館、古本屋に足を運び、アフリカの文献を読みまくったそうだ。しかしそこで集まる情報もサハラ砂漠、リビングストンなどの探検家の生涯、ザイールやアンゴラの内乱とかばかりで、日本語のコンゴについての情報は皆無に等しかったようだ。

資源も産業もない人口200万人たらずの国(当時)で、社会主義のうえに軍事独裁政権で、外国人をあまり国に入れたがらなかったらしい。特にテレ湖がある区域は、ヨーロッパ人の学者すらほとんどたいした調査を行っておらず、怪獣はおろか、人々がどういう暮らしをしているのか、ジャングルにどういう動物がいるのかさえ、わからなかったらしい。

今、インターネットで検索すると、ものの1分も経たないうちにあらゆる情報を入手することができてしまう。

当時、手に入らなかった地図もあっという間に見ることができる。それも航空写真で。

これは便利になったと喜ぶべきなのだろうが、何かロマンを失ったような気になるのは僕だけだろうか?

かと言って、彼らが何も下調べや調査なしでコンゴに行ったわけではない。
川下りや洞窟のスペシャリストなど、普段から得意な分野の訓練をしているメンバーが集まっているし、現地で使われているリンガラ語を学習するなど、無謀な素人ではない。

そして彼らの目標は、写真やビデオフィルム、録音テープなどを利用し、誰でも納得ができるような形で怪獣の実在を証明することだった。

読み終わって・・・

よくこんなバカなこと(いい意味で)に、お金と時間をつかったなと思った。

分別のつく大人になってこんなことをやっていたら、本当のバカと言われてしまうかもしれない。でも、若い時なら、きっとよい経験になるだろう。こんなことに真剣に取り組めるのは若者の特権だ。

読んでいて羨ましく感じた。でも、もし学生時代に戻って、一緒に探検に参加するか? と聞かれたら、やっぱり断るだろう。

ドライブしたり、デートしたり、もっと楽しいことがいっぱいあるのに、こんなしんどいことしたくないだろう。

そう考えると、オッサンになった今、「うへぇ〜、大変だなぁ・・・」と、こうやって本を読んで楽しむのが自分にはよいのではないかと思った。

この時、撮影された映像を観たいなぁ・・・と思って検索してみたら、なんとYouTubeにアップされているではないか。

10分弱のダイジェスト版だけど、本を読みながら想像していた映像が実際に観られたので、感動した。

ちょっとロマンを失ったかもしれないけど、あらためて本当に便利な時代になったと感じた。

子供の頃、「川口浩探検隊」を観て、ワクワクした人にぜひ読んでもらいたい。あれは冒険エンターテイメントだったけど、ノンフィクションもおもしろいよ。