Amazonのレビューが賛否両論あったので、又吉直樹の「火花」を読んでみた

7月16日の夜のニュースで、ピースの又吉直樹が芥川賞を受賞したことが大きく報じられました。

「アメトーーク!」の「読書芸人」で本が好きということも知っていましたし、「火花」を書いたことも知っていましたが、まさか芥川賞まで受賞すると思っていなかったので驚きました。

又吉直樹は嫌いじゃないし、どちらかというと好きな方なのですが、純文学は苦手なので、ほとんど読みません。

直木賞受賞作は何冊も読んでいますが、芥川賞受賞作はおそらく平野啓一郎の「日蝕」しか読んでいないと思います。何年前か調べてみたら、「日蝕」は第120回、1998年下半期でした。もう17年も前です。

火花(又吉 直樹)のAmazonのカスタマーレビュー

だから、今年も芥川賞は特に気にしていなかったのですが、Amazonで「火花」のカスタマーレビュー を見てみると、かなり意見が分かれていました。

もともとそれほど興味を持っていなかったのですが、気になってきました。どう感じるか、実際に自分で読んでみよう。

火花(又吉 直樹)

というわけで、「火花」(又吉 直樹)を読みました。

普段、娯楽作品しか読まないので、芸術的だとか、良い悪いとか、よくわかりませんでした。

芸人って「笑い」について、普段からこんなに一生懸命に考えているのかと思いました。何気ない会話のやり取りの中でも「どうすればもっと面白くなるか」ずっと考えている姿はストイックなアスリートのようにも感じました。

最後には予想もできないことになるわけですが、これもそれくらい「笑い」について本気に考えたということなのかもしれません。よくわからないけど。

芸術性についてはわかりませんが、自分が選考する立場なら迷ったと思います。

今、本屋に行くとわかりますが、帯に又吉直樹が載っている本が多いのです。写真が載っているものもありますが、文字だけでコメントが書かれているものもよく見かけます。
又吉直樹の名前が載っていると、売れるのでしょう。

その又吉直樹の書いた本「火花」も当然売れています。64万部です。
ここで話題になれば、さらに売れるでしょう。

お笑いコンビ「ピース」の又吉直樹さん(35)の小説「火花」が芥川賞に決まったのを受け、版元の文芸春秋は17日の営業会議で40万部増刷を決めた。累計で104万部となる。

又吉さん芥川賞:「火花」100万部突破へ 40万部増刷 - 毎日新聞」より

というわけで、芥川賞受賞で「40万部」増刷決定です。
1,296円×40万部=5億1840万円です。

他の候補者の方には申し訳ありませんが、他の候補作品が受賞していたら、ここまで売れていないでしょう。

誰が受賞してもたいして変わらないなら、純粋に芸術性だけで選べばいいと思いますが、お金に影響が出てくるとなると、「火花」に受賞して欲しいと思う人、受賞して欲しくないと思う人、いろんな思惑があって、迷ったのではないかと思いました。

でも、自分が選考する立場でも、この影響力を考えると「火花」を選んでいたのではないかと思います。

文化庁の「平成25年度「国語に関する世論調査」の結果の概要」に、「1か月に読む本の冊数について」の数字が載っていますが、16歳以上の半分近い人が本を読まないようです。

読まない:47.5%
1、2冊:34.5%
3、4冊:10.9%
5,6冊:3.4%
7冊以上:3.6%

しかも、この「読まない」人は増えてきています。

平成14年度調査:37.6%
平成20年度調査:46.1%
平成25年度調査:47.5%

放っておいたら、読まない人はさらに増えることが考えられます。さらに「純文学」で考えると、読んでいる人はもっと少ないでしょう。

読む習慣がないだけで、何かのきっかけがあると、読書のおもしろさに気づく人もきっといるでしょう。
そう考えると、又吉直樹には将来の純文学ファンを増やすことまで期待できるのではないかと、もう「火花」の内容とは関係なく、そんなことを思いました。

こんなこと言うと「芥川賞を金で選ぶとはけしからん!」と思われる人もいると思いますが、これって音楽など他の業界でも同じような話は耳にしたことがあるような、ないような・・・