「はじめての不倫学 」を読んで、レッツ・ポジティブ婚外セックス!

「はじめての不倫学 『社会問題』として考える」(坂爪 真吾)を読みました。

はじめての不倫学 「社会問題」として考える」(坂爪 真吾)

「はじめての不倫」ではありません。
「はじめての不倫学」です。

なので、「こうやって不倫相手を探そう」「バレないようにするテクニック」など、これから不倫をしてみたいと考えている人に向けた「不倫のやり方」を詳しく説明した本ではありません。
この本を読んでも「不倫の達人」にはなれないでしょう。たぶん。

まず、そもそも不倫とは何なのか?
どこから不倫で、どれは不倫にならないのか?

不倫について、この本では「既婚者が、配偶者以外の相手と恋愛感情を伴った肉体関係を持ち、かつその関係を継続する意志を相手方と共有していること」と定義されています。
肉体関係だけで恋愛感情がなければ不倫にならないし、肉体関係のない恋愛感情だけでも不倫になりません。また、一夜限りの関係や、性風俗や売買春による金銭を介した関係も不倫に含まれません。

このあたりは一般的な考え方に近いのではないでしょうか。
僕もここまでは、異論ありません。

社会問題としての不倫

しかし、「誰にでも起こり得る、社会問題としての不倫」で「ん?」となりました。
一般的に不倫は個人の倫理観や道徳の問題、あるいは夫婦関係の問題として考えられますが、この本では「個人の問題」としてではなく「社会の問題」として考えています。

「若者世代の貧困、ひとり親家庭や生活保護など、社会問題の背景には、多くの場合、離婚による家庭破綻、それに伴う経済状況や心身の健康状態の悪化が潜んでいる」

「その離婚の主な動機は、第1位が『性格の不一致』、第2位が『異性関係』で、浮気や不倫が離婚を引き起こす大きな原因になっている」

だから「不倫は『社会の問題』だ」という話です。
影響がないとは言わないけど、「風が吹けば桶屋が儲かる」みたいに、本当に「貧困や生活保護の問題が不倫につながっている」のかな?と思ってしまいます。

不倫は感染症

さらにこの本では、不倫をインフルエンザのような「感染症」として考えています。インフルエンザに感染することは、基本的に防げません。ワクチンを打っても効かないこともありますし、ワクチンを打たなくてもかからない人もいます。感染した人に対して「努力が足りない」「自己責任だ」「周りの迷惑を考えろ」とバッシングを浴びせても意味がありません。

不倫も同じで、基本的に防げないものなので、いつ感染する(不倫する)かわからない。なので、「いつ、どこで感染しやすいのか」(感染経路)、「感染する確率を減らすためにはどうすればいいのか」という予防策(ワクチン)、「感染した場合、どうすれば重症化、周囲への感染(被害拡大)を最小限に食い止められるか」が重要だ。という話です。

不倫ワクチンとしての「ポジティブ婚外セックス」

ワクチンの話あたりから、徐々についていけなくなりました。
不倫しないために、こういうサービスやシステムもありますよと、いろいろ紹介されているのですが、不倫はダメで、これらを利用するのはOKなのがよくわかりませんでした。

もちろん、理由は書かれています。例えば、「このような集まりに参加して、今まで悩んでいたAさんも...」みたいに実例も載せて紹介されているのですが、「これ、不倫とどう違うの? 詳しく説明されているので、不倫と違うことはわかる。でも、やってることは同じじゃないのか???」と、腑に落ちないのです。

そして、「ポリアモリー」などにもふれ、話は壮大になっていきます。

ポリアモリーとは、つきあう相手、親密な関係を同時期に、一人だけに限定しない可能性に開かれていて、全ての関係者が全ての状況を知る選択が可能であり、全員がすべての関係に合意している、という考え方に基づく行為、ライフスタイル、または恋愛関係のことである。

ポリアモリー - Wikipedia」より

これ、そもそも最初からそういうパートナーじゃないと無理じゃないかな。「円満な婚外セックスライフ」が普通の夫婦で認められるとは思えないのですが・・・

そして「ポジティブ婚外セックスを条件付きで社会的に受容せよ」で書かれているのがこちら。

いくら道徳論を声高に叫んでも、私たちの社会が一夫一婦制を採用し続ける限り、これまでも、そしてこれからも不倫に走る人はいなくならない。不倫ウイルスに感染した人は急に不倫をやめることはできないし、強制的にやめさせることもできない。法律や戒律で禁止しただけでは不倫は決してなくならないということは、これまで見てきた通り、歴史が証明している。

要は、一夫一婦制だと、不倫する人は必ずいる。
やめさせることはできないし、決してなくならない。

で、こちら。

だとするならばせめて、不倫ワクチンとしてのポジティブ婚外セックスを社会的に条件付きで受容した上でその安全性を向上させ、性感染症や家庭崩壊などの悲劇の発生率を少しでも低めるべきだ。それによって、不倫そのものを止めることはできなくても、当事者の精神破綻や家庭破綻などの悲劇は少しでも減らせるはずだ。

「ポジティブ婚外セックス」を社会的(ただし条件つき)で受け入れてくれ!

受け入れられるか!

1、2時間かけて、この話を読んだと思うと・・・

人の女房は鰒(ふぐ)の如し。好味なれども命危うし。

この本では、不倫の怖さについても、ふれられています。
まず、高確率で周囲にバレる。特に初心者の不倫は職場でも家庭でもすぐ気づかれる。不倫後、仮に現在のパートナーと別れて不倫相手と結婚しても大半はうまくいかない。また、不倫には中毒性があるなど、不倫経験のない人には、抑止力が働くかもしれません。

その一方、「不倫のセックスの気持ちよさを一度でも体験した人は、多くの場合、それ以前のセックスには戻れない。今までの人生で経験してきた恋愛やセックスの全てが色褪せるほどの衝撃を受けて、『今までの人生は一体何だったんだ』と愕然とする人もいる」など、不倫の魅力(?)についても書かれていて、ダークサイドに堕とされてしまう人もいるのではないかと思いました。

それも含めて、これ。

「人の女房は鰒(ふぐ)の如し。好味なれども命危うし」という格言もある。
不倫のセックスはフグを食べ続けるようなもので、いつか必ず毒にあたる、というわけだ。

不倫経験のある人が読むと、「性欲と性交欲は違う」など、共感できる話も多いのかもしれません。

性交欲は「相手と気持ちの通い合ったセックスをしたい」という欲求で、相手がいなくても満たせる性欲と違って、性交欲は相手がいなくては満たせない。また、金銭を介したセックスでは、性交欲までは満たせない。
なので、不倫にハマっている人には、代替がきかないそうです。

読む人の立場や経験によって、いろいろ受け止め方が違うのではないでしょうか?
「ポジティブ婚外セックスを条件付きで社会的に受容せよ」が受け入れられる人がどれくらいいるのか、気になるところです。