ウェブマーケティングに取り組む前に、読むべき一冊「ウェブマーケティングという茶番」

普段、本はAmazonで買うことが多いのですが、月に何度か大きい本屋さんに行くようにしています。

Amazonのレコメンド機能はすばらしく「よく一緒に購入されている商品」や「この商品を買った人はこんな商品も買っています」「最近閲覧した商品とおすすめ商品」などで、興味のありそうな本を次々紹介してくれます。

でも、それらは過去に買った本や閲覧した本の情報を元に提案してくれるので、ぜんぜん無関係な本や、つながりのない本は提案するのは難しいようです。

本屋さんでウロウロしていると、「おっ! こんな本があるのか」と、新しい本に出会うことができるので、Amazonだけではダメなのです。

今回、紹介する本も本屋さんをウロウロしていた時、新書のコーナーで平積みされているのを見かけました。

ウェブマーケティングという茶番(後藤 晴伸)

ウェブマーケティングという茶番」(後藤 晴伸)です。

おい、Amazonよ。
なぜこの本を今まで提案してくれなかったのだ?

ウェブマーケティングに関する本はよく閲覧しているし、何冊か買ったこともあるのに、何をやってるのだ。

Web制作の仕事を始めて、19年が経ちました。最近はウェブマーケティング、デジタルマーケティングという言葉を聞かない日はないくらい、我々の仕事には大きく関わっています。仕事に直接関わらない方でも、耳にすることはあるのではないでしょうか?

というわけで、すぐに手に取り、レジに直行しました。

タイトルから「ウェブマーケティングが未来を変えるみたいなことを言われたりするけど、ウェブマーケティングなんて茶番だ! インチキだ! そんなものやっても何もできないよ」みたいな、ウェブマーケティングを否定する話かと思ったのですが、ぜんぜん違いました。

「ロクでもない広告代理店"あるある"」であり、「役に立たない制作会社"あるある"」であり、「客を食いものにするSEO会社"あるある"」でした。

知らない人が読むと「ホントにこんなヒドい会社あるの?」と思うかもしれません。

ハッキリ言いましょう。本当にこんなヒドい会社があります。

著者の後藤さんほどじゃありませんが、僕もおつきあいした制作会社や広告代理店などの中に「この会社はどうしてこんなことするのかな?」と妙に感じたことが何度かありました。

でもその時は、相手はその道のプロなんだから・・・と思って、何か考えがあってやっているのかな?と思っていました。その時は、まさかスキルがないだとか、金のことしか考えていないなんて思いもしませんでした。でも、ここに書いてあることが本当なら、辻褄があってくるのです。よくよく考えてみると、その通りと言っても間違いではないのです。

この本、ウェブマーケティングに携わる仕事をしている方は"あるある"として楽しめると思います。特に、同業者の人は反面教師として、クライアントの人はこんな業者とつきあわないようにするため参考になると思います。

こんな広告代理店はイヤだ

普段はバナー広告や、ランディングページも制作しているのですが、納期が重なって対応できなくなった時、広告代理店でバナー広告とランディングページ、インフィード広告用の記事を制作してもらったことがあります。見積の金額は思っていたより高く、これだけの費用を取るなら、かなりしっかりしたものを作ってくれるんだろうと期待したのですが・・・

「これ、本当にランディングページを作ったことがある人が作ったのか・・・?」みたいなランディングページが出てきました。またプロのライターが書いたという記事は、僕が読んでも稚拙なもので、てにをはレベルの細かい修正を指示しないといけない原稿を見た時は「これ、お前(営業担当)が書いたんじゃないのか・・・?」と思わず口に出してしまいそうになりました。

この本によると、ウェブマーケティングの業界は、総じてクリエイティブの力が弱く、バナー広告やウェブサイトなどを制作する力が足りないそうです。ディレクションができる人がいないので、バナー広告・ランディングページの制作も指示できないと。たまたまかもしれませんが、まさにそんな感じでした。

こんな制作会社はイヤだ

逆に、人目を引くデザインなどクリエイティブ系の作業を得意としている制作会社には、ウェブマーケティング全般に関わったデザイナーや、マーケティングに詳しい人間がいないため、個々の事案に合ったセールスプロモーション戦略に沿ったものを作ることには慣れていない会社が多いそうです。そうなると、デザインはよいが、それを見て商品やサービスに興味持ってくれるか疑わしいような制作物ができてしまいます。

これも似たようなケースがありました。Webサイトのリニューアルを行うのに、現状のアクセス状況や課題など何も把握しないまま「こんなイメージにしませんか?」と、ぜんぜんイメージの違う海外のWebサイトを見せられました。その後も、商品の販売をゴールに設定しようとするも、ひたすらオシャレなサイトのデザインを提案されました。

「ここはどうする?」と、判断が必要になった時、わかりやすい方、クリックされやすい方を選ぶように勧めても、カッコいい方、派手な方を選んでしまわれました。いくら説明してもゴールが一致しないので、意見は平行線をたどり、諦めてしまいました。その結果、読みやすさや、わかりやすさは二の次のとんでもないサイトができあがってしまいました。

この本にも載っていましたが、プロモーションという目的から外れてしまったら、いくらいいデザインでもあまり意味がありません。

日頃から大手企業の仕事を中心にしている制作会社は、デザインを重視したサイトを制作するのを得意としています。大手企業はブランディングやイメージ戦略を常に考えているからです。
ところがこういう制作会社は、売上の即戦力となるようなサイトを作ることには慣れていません。その結果、ネット上で商品に興味を持った人をこういう会社が作ったサイトに導いても販売や会員獲得に結びつかず、効果がまったくなかったということが起きてしまいます。

これは「制作会社選びでもネームバリューに惑わされてしまう」に書かれていたことで、会社のネームバリューや、制作実績に並ぶ大手企業の名前で、制作会社を選ぶ人がいるという話ですが、決裁権を持つ、最終判断する人がこのような人だと・・・

じゃあ、どうすればよいのか?

どうして客を食いものにする広告代理店やSEO会社、制作会社が存在するのか? ってことになるのですが、ウェブにしてもマーケティングにしても、目に見える物を売っているビジネスと違って、素人にはわかりにくいので、そこにつけ込んで次々とカモにしているのです。

発注するクライアント側にも原因があり、依頼先をきちんと選ばないだとか、ウェブやマーケティングについての基本知識がないだとか、なにごとも相手任せにしてしまうなど、問題のあるウェブマーケティング会社を迎え入れる環境を作ってしまっています。

じゃあ、どうすればよいのか?

この本の最後に、ウェブマーケティングの新規パートナー選び、既存パートナー見極めをするための「チェックポイント」が載っています。新規の場合は契約をする前に、既存の取引先にも、このチェックポイントを理解して、質問を投げかけてみて、どのような反応をするかで吟味すればよいと思います。営業に来た会社に言われるがままに契約書にサインしていては、無駄な費用を使ってしまうことになるでしょう。逆に僕は、どんな質問が来ても返せるようにしておかねば・・・

ウェブマーケティングに取り組む前、特にパートナーとなる会社を選ぶ前に、読むべき一冊でした。