10年後も自分の仕事は残っているのか?「10年後に食える仕事、食えない仕事」

「10年後に食える仕事、食えない仕事」(渡邉 正裕)を読みました。

10年後に食える仕事、食えない仕事(渡邉 正裕)

これはおもしろい本だと思ったので、もうここから先は読まなくてもいいです。
それよりも、今すぐこの本を買って読んで欲しい。

いやいや、どんな本かわからないので、いきなり買うわけには・・・
という方のために、簡単に内容をご紹介。

まず、この本はここから始まります。

これからの経済はグローバル化だ、皆が英語を操って世界を相手に丁々発止の ビジネスをしなきゃいけない、キャリアアップして世界に通用する人材にならないと 生き残れない──。そんなまことしやかな言説がはびこっている昨今だが、 それは英会話学校やビジネススクールの営業トークに過ぎない。

ところが、そんなうたい文句に脅され、自分もキャリアアップしなくては、 と様々な講演に出かけたり、ビジネス書を読み漁ったり、とりあえず英語学校に 通ってみたり、資格取得マニアになったりして、疲弊している人も多い。

実際には、グローバル化がいくら進もうが、日本人の仕事として日本に残る仕事は、 必ず残り続ける。逆に、グローバル化で減る仕事、賃金相場が限界まで下がり続ける 仕事、丸ごとなくなる仕事がたくさん出てくるのも事実だ。だから、自分が どの領域で稼ぐのかを考え、仕事を選び、能力を高めていかねばならない。 本書はその航路図となるものを目指して執筆した。

「グローバル化時代の職業マップ」が載っています。
これは職業を縦軸の「スキルタイプ」と横軸の「日本人メリット(日本で生まれ育っていないと身につけづらい特殊性)」で4つのグループにわけているわけです。

  1. 重力の世界
    (スキルタイプ:技能集約的、日本人メリット:小)
    • グローバルの最低給与水準に収斂されていく
    • 平均賃金が日本の20分の1のインド人、中国人との勝負
    • 低付加価値なブルーカラー職種が多い
  2. 無国籍ジャングル
    (スキルタイプ:知識集約的、日本人メリット:小)
    • 世界70億人と仁義なき戦い
    • "超成果主義"の世界
    • 勝ち残れれば青天井
    • 才能も運も必要
    • 顧客と直接接点のない職種が多い
  3. ジャパンプレミアム
    (スキルタイプ:技能集約的、日本人メリット:大)
    • 日本人ならではの高いサービスマインド、職人気質、チームワーカースピリットを活かす
    • 「同じ日本人」という信頼感を活用した対面のサーヒス
    • 営業マンや旅館の女将など
  4. グローカル
    (スキルタイプ:知識集約的、日本人メリット:大)
    • 日本人の強みを活かしつつ、高付加価値スキルで勝負
    • 日本市場向けの高度専門職
    • 高度な日本語と日本での人的ネットワークを活かす
    • 「士」業など

グローバル化、IT化が進み、世界経済のフラット化を受け入れざるを得ないわけで、中国、インドの影響からも逃れることはできません。
そこで最初の「これからの経済はグローバル化だ、皆が英語を操って世界を相手に丁々発止の ビジネスをしなきゃいけない、キャリアアップして世界に通用する人材にならないと 生き残れない──」になるわけですが、これが「重力の世界」「無国籍ジャングル」になります。

でも、みんながみんなというわけではなく、グローバル化が進んでも日本人の仕事として日本に残る仕事は残るということです。それが「ジャパンプレミアム」と「グローカル」です。

「重力の世界」を読んでいると、先がないので暗澹たる気持ちになってきます。
10年前なら本当にこんなことになるかな?と思ったかもしれません。
でも、国内より中国でコールセンターを開設した方が電話代等含めても費用が抑えられることを数年前にテレビで知った時は驚きましたましたが、今や珍しくもなんともなくなってしまいました。
最近のコンビニやファストフードの店員の外国人率を考えると、危機感を感じない人はいないでしょう。
ちなみに、国勢調査のデータをもとに算出したところ、日本人の7割がこの「重力の世界」に入るらしい・・・

では、このまま仕事を失うか、給与がさがっていくのを待っているしかないのか?
中国人、インド人に死角はないのか?

著者が中国・インドに滞在し、現地で働く日本人を中心に取材した時のことに書かれていました。

日本人の世界平均から外れている点は、清潔さ(ex. 会社や飲食店ツバを吐かない)、きめ細かさ(ex. 見えない裏側までキッチリ施工)、勤勉さ、顧客へのサービス精神、道徳心(ex. 会社で商品を盗まない)、組織への高い忠誠心(ex. すぐに会社を辞めない)などだという。現地で働いていて、それらと正反対なめに遭遇したことで、はじめて日本人の常識が適用しないことに気づいた、といった話を、具体的なエピソードを交え、ずいぶん聞いた。

  • 日本など全く話にならないほどの「超・格差社会」の容認。
  • 人材の流動性が異常なほど高く半年〜数年で転職するのが当たり前の「短期眼的キャリア」。
  • 男女の差なく向上心もハングリー精神も旺盛な「超キャリアアップ志向」。
  • チームワークが苦手でチームワークに意義を見いださない「超・個人主義」。
  • 顧客サービスの概念がほぼ存在しない「身分&階層社会」(中国の共産党支配や戸籍制度、インドのカースト制度)。

ここがインド人、中国人の「弱み」の部分で、日本人にとっての「強み」の部分で、「チームワーク力」と「顧客サービス力」が「日本人メリット」になります。

この本を読む人は、自分の今の仕事、これから選ぼうとしている仕事がどうなるか?が気になっていると思います。
僕の場合はどうだったかと言いますと、「Webデザイナー」という職業は載っていませんでしたが、「デザイナー」は「無国籍ジャングル」に入っていました。それも、その中でも「神の領域への挑戦者」に入っていました。
ここに入っている他の職業は国籍に関係ないプロボクサーや登山家、宇宙飛行士やアーティストなどです。日本を離れてチャンスが多い成長市場に打って出て、勝ち残りを目指す。海外にも進出できるが、海外からも日本に参入できる。そんな生存率は低いし、才能も馬力も必要な世界です。

なんかちょっと違う・・・

実情は「重力の世界」、その中の「海外移転しないが、国内で徐々に外国人に置き換わっていく職業」か、一番早く影響を受ける「IT化で瞬時に海外移転する職業」に分類されるのではないかと思います。
今はかろうじて「日本語の壁」に守られていますが、日本語の堪能な中国人、インド人が増えてくれば、置き換わることが考えられます。クライアントとの打ち合わせも不要となると、海外移転すら可能です。

単純なコーディング作業を行うだけなどでは、まさにこの「重力の世界」なので、企画側、顧客側に近づき、日本人メリットが活かせるようにしなければいけないと感じました。
日本人顧客に日本語でヒアリングし、要望をくみ取り、制作する。
コンサルタントやSEと同じ「グローカル」に近いポジションに入っていくわけです。

自分はなんとかなる。いや、なんとかする。
そう思っても、今でも生活保護を受けている人が200万人を超えているのに、「重力の世界」で職を失う人が増えていくと考えると、日本はどうなるのか?と考えさせられました。

そして、最後にこう書かれていました。

一足早く財政危機が訪れたヨーロッパ諸国と同様、いやそれ以上に借金を作り過ぎてしまった日本では、もはや国の福祉には頼れそうにない。ファミリー福祉もあてにできない。頼れるのは自分だけ。財政危機が表面化して雇用が縮小しても、自分で職を得て生き延びるしかないのだ。

厳しいね・・・