桑田佳祐のライブと言の葉大全集「やっぱり、ただの歌詩じゃねえか、こんなもん」
「桑田佳祐言の葉大全集 やっぱり、ただの歌詩じゃねえか、こんなもん」(桑田 佳祐)を読んだ。
桑田佳祐がソロで活動を始めた1987年から最新作の「I LOVE YOU -now & forever-」までの25年間に作った曲の歌詞と、その曲を作った頃について書かれたものだ。
サザンオールスターズのデビューから「綺麗」までの6年間の歌詞について書いた「ただの歌詩じゃねえか、こんなもん」が出たのが1984年なので、実に28年ぶりとなる。
1979年にリリースされた「10ナンバーズ・からっと」は歌詞カードに書かれている歌詞が「○×△♂......」みたいな記号が書かれていた。当時はなぜこんな歌詞カードにしたのか、よくわからなったが、アルバム制作時に納期までに歌詞が決まらず、記号を載せていたらしい。
そんなこともあり、本当の歌詞が載った「ただの歌詩じゃねえか、こんなもん」は何度も読んだ。
この本を読む3日前、桑田佳祐のライブを観てきた。最後に桑田佳祐のライブを観たのは2008年に横浜の日産スタジアムで行われたサザンオールスターズの解散ライブであり、デビュー30周年ライブである「真夏の大感謝祭」以来になるので、4年ぶりだ。
その間に、食道癌が発覚し、2010年に予定していたアルバムの発売を延期し、ライブも中止するなど、音楽活動を休養したことや、東日本大震災が起こったりしたことも影響したのだろう。
3時間半に及ぶパワフルなライブは以前と変わりなかったが、MCや選曲にいのちや、生と死の色が濃く出ていたような気がした。
特に「みんなが幸せでありますように」「来年も幸せな一年になりますように」と「幸せ」というキーワードも多く耳にしたように感じた。
当然、いろんなできことや感情を歌にするので、まったく影響がないことはないと思う。ただ、それが思っていたより大きく感じただけだ。
でも、この本を読んでムリもないと思った。
食道癌の手術をして、何日か寝て過ごして、ハイ、治りました!
そんなものではなかった。
桑田佳祐が病院の廊下を点滴のぶら下がったガラガラを押しながら歩く練習をしたり、「今までは胃でやっていたことを、口でやっていかないといけないんですよ」看護師さんのそんな話を聞きながら消灯前のうす暗い廊下を歩く姿は想像もしていなかった。
人間として、歌手として死を考えさせられたことだと思う。だが、そこで打ちひしがれていたわけではなかった。
今の自分はこんな姿だけど、こうした日々はむしろ、「これまでの人生より充実しているんじゃないだろうか」と思ったそうだ。
そして「作りかけのアルバムを、絶対最高のモノにしてやる」と思い、そのモチベーションが、いつか必ずベストな状態の自分を取り戻してやろうと、多いに奮い立たせてくれたそうだ。
だからこそ、2011年に宮城で行われた桑田佳祐自身の復活ライブでもあった復興ライブ「宮城ライブ 〜明日へのマーチ!!〜」は特別な気持ちで臨んだことがわかった。
詩に関しては、入院するまでにレコーディングは進んでいたいたようで、4曲を残して終わっていたようだ。だから「死」をイメージする詩があったのもたまたまらしい。
CDでは何度も聴いていたが、今回のライブで聴いてあらためていい曲だと感じた曲が何曲かあったが、その一つが「幸せのラストダンス」だ。
ジンときた。
友達はそれぞれ所帯を持ったのに
僕ら二人は今日も恋愛遊戯(ロマンス)に酔いしれる
十年後の君も変わらず綺麗だろう
不安な世の中だけど もう家族が欲しいのさ二人の出逢いこそ Destiny
惚れた男と女
お似合いと他人(ひと)は言うけど
この暮らしにはどんな未来が見える?Oh, lady lady 勇気を出して
ラストダンスを僕とどうぞ
幸せを分け合いたいさぁ 回れ回れメリーゴーランド
「幸せのラストダンス | sas-fan.net」より
永遠なる願いを
今宵こそ見つめ合い 言わせて
"Marry me."
とにかく死なずにこれからもCDやライブを聴かせて欲しい。
そしてできれば、桑田佳祐ソロだけでなく、いつかサザンオールスターズも・・・