横浜で「夜明けの街で」を読んで、愛の谷間で溺れたい

5月に横浜に行く機会があったので、新幹線の中で「夜明けの街で」(東野 圭吾)を読んだ。

夜明けの街で(東野 圭吾)

僕の中では横浜と言えば、サザンオールスターズの「LOVE AFFAIR 〜秘密のデート」、桑田佳祐の「ダーリン」のイメージだ。どちらも好きな曲で、歌詞の中に横浜の地名や名所などが出てくる。

その「LOVE AFFAIR 〜秘密のデート」にインスピレーションを受けて書かれたのが「夜明けの街で」だ。

タイトルの「夜明けの街で」からして「LOVE AFFAIR 〜秘密のデート」の出だしからとられている。

夜明けの街で すれ違うのは
月の残骸(かけら)と 昨日の僕さ
二度と戻れない 境界(さかい)を越えた後で
嗚呼 この胸は疼いてる

また、この小説の舞台は横浜で、歌詞に出てくる大黒埠頭で虹を見たり、名前は出てこないがシーガーディアンと思わせるバーでお酒を飲み、バーのあるホテルに泊まったりしている。

マリン ルージュで愛されて
大黒埠頭で虹を見て
シーガーディアンで酔わされて
まだ離れたくない

さらに「LOVE AFFAIR 〜秘密のデート」をカラオケで歌うシーンもある。

つまり、この本を読むことにより、より横浜を満喫できるのである。

不倫する奴なんて馬鹿だと思っていた。ところが僕はその台詞を自分に対して発しなければならなくなる―。
建設会社に勤める渡部は、派遣社員の仲西秋葉と不倫の恋に墜ちた。2人の仲は急速に深まり、渡部は彼女が抱える複雑な事情を知ることになる。15年前、父親の愛人が殺される事件が起こり、秋葉はその容疑者とされているのだ。
彼女は真犯人なのか?渡部の心は揺れ動く。まもなく事件は時効を迎えようとしていた...。

Amazon.co.jp: 夜明けの街で (角川文庫): 東野 圭吾: 本」より

現在進行形の渡部と秋葉の不倫、15年前の殺人事件、この2つの話でできているのだが、後者の15年前の殺人事件の話は正直、あんまりパッとしなかった。15年間真犯人を捕まえるためにつきまとっている関係者がいたり、「そんなことあるかな?」といった印象なのに対して、前者の不倫の話はものすごくリアルだった。

どっちが楽しめたか? と聞かれると、間違いなく「渡部と秋葉の不倫」の話と答える。

ひょんな事から近づき、交際が始まった時のウキウキ感、そして特別な関係になり夢中になっていき、どんどん深みにはまっていく様がリアルに描かれている。
いつか奥さんにバレるんじゃないか?というハラハラ感や、いつか不倫相手から捨てられるんじゃないか?という不安感など、経験したことがある人なら楽しめるか、身につまされるか、わからないが、これだけでも十分楽しめると思った。

前半は「こんなことがあればいいのにな・・・」って中年男の妄想を楽しめたが、後半はミステリーパートである15年前の殺人事件にウェイトが高くなっていく。そして、最後を迎えるわけだが、ここで「えっ?」となってしまった。

意外性はないかもしれない。勘のいい人なら察しがついたかもしれない。そんなことよりも、不倫の行方が・・・

なんかスッキリしなかった・・・

そして、最後に、不倫する奴なんて馬鹿だ。