大好きだから、わざと同じにした「40代、職業・ロックミュージシャン」
「40代、職業・ロックミュージシャン」(大槻 ケンヂ)を読んだ。
正確には「40代、職業・ロックミュージシャン 大人になってもドロップアウトし続けるためにキッチリ生きる、'80年代から爆走中、彼らに学ぶ「生きざま」の知恵」ってタイトルなのだが、長すぎ。
タイトルでは40代と書いてあるが、40代50代のロックミュージシャンに大槻ケンヂが収入、健康、家庭、育児などについて、聞いたインタビュー集。
同世代なので、結構身につまされた。
もちろん同じ40代でも、しっかりしてる40代もいれば、ダメな40代もいる。
でも、職業ロックミュージシャンの人たちはこの幅が広い。
どうするんだ?って心配してしまうような人も結構多い。
若い時の貧乏は「頑張れ!」と思えるけど、40代にもなれば、10年後、20年後のことなんかも考えてしまったりして、読んでいて侘しい気分になった。
個人的に気になったのが「すかんち」のRollyだ。
僕はすかんちやRollyのファンであるとことわったうえで、知らない人のために書いておくと、「Rollyの曲の多くにはオリジナルの曲が存在する」。
わかりやすく言うと・・・
ある日、ラジオを聴いていると、聞き慣れた曲が流れてくる。
すかんちの曲だ。
あれ? 英語の歌詞? 誰かカバーをしてるのかな?
流れている曲を調べると、タイトルがぜんぜん違う。
調べてみると、すかんちの曲より、古くに発表されている曲。
あの曲のオリジナルは、これか・・・
だからRollyの曲は、3つの評価に別れる。
- 他人の曲をパクリやがって!
許せないったら、許せないったら、許せないのよ! - Rollyさんはパクったりしません!
そんな曲知らないし、関係ないし、不愉快です! - この曲がオリジナルか・・・
また渋いところをついてくるねぇ〜!
僕の場合は「3」なのだが、疑問に思っていたことがある。
「リスペクトをしているから」「影響を受けた」みたいな理由ではフォローできないくらいのソックリ度なので、本人はどう思ってやってるのか、それは気になっていた。
それがこの本でわかった。
Rollyが佐野史郎とテレビ番組で会った時のエピソードだ。
ROLLY: 佐野さんは、〝はっぴいえんど〟のものすごいファンで、僕も彼らが大好きだったの。それで、『恋するマリールー』っていう曲の歌いだしを、わざと〝はっぴいえんど〟の『田舎道』の詩とメロディーと同じにしたんだけど......。
大槻: ああ、オマージュとしてね。でも、佐野さんとしては考えかたのちがいでそういうのが許せなかったと。これは、大人げないって言っちゃいけないんだよね。ある意味崇高な戦いですよ、アハハ!
ROLLY: むしろ僕は、〝はっぴいえんど〟が好きな人なら、「キミ、よくこの曲わかってるね!」って言ってくれるかと思ってたの。
驚いた!
「大好きだから、わざと同じにした」
まさかこんな回答だとは思わなかった。
これほどシンプルな理由があるだろうか?
誤解しないで欲しいのは、ただパクっているのではないというところだ。
売れそうだからパクるとか、人気が出そうだからパクるとか、バレないからパクるとか、そんな理由じゃないってことだ。
大好きだから、わざと同じにした。
パクられた側も「大好きだから、わざと同じにした」と言われたら、「えっ?」「フェ?」くらいしか返せないだろう。
どんなにがんばっても「いや・・・」が精一杯だ。
それくらいスゴい言葉だと思った。
これだけでも、この本を読んでよかったと思った。
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