「ネットのバカ」を読んで、ちょっと頭を整理

1ヶ月ほど前、「ネット依存の中高生、全国に52万人」というニュースを見た。
「使用時間を短くしようとするとイライラする」などインターネット依存の疑いが強い中高生が推計で全国に52万人いることが、厚生労働省研究班の調査でわかったらしい。

インターネットは便利だが、底なしの沼だ。大人でも使い方を誤ると大変なことになる。
そんなわけで「ネットのバカ」(中川 淳一郎)を読んだ。

ネットのバカ(中川 淳一郎)

目次はこんな感じ。
序章 ネットが当たり前になった時代に
第1章 ネットの言論は不自由なものである
第2章 99.9%はクリックし続ける奴隷
第3章 一般人の勝者は1人だけ
第4章 バカ、エロ、バッシングがウケる
第5章 ネットでウケる新12ヶ条、叩かれる新12ヶ条
第6章 見栄としがらみの課金ゲーム
第7章 企業が知っておくべき「ネットの論理」
第8章 困った人たちはどこにいる
終章 本当にそのコミュニケーションは、必要なのか?

勝ち組は少数派

「序章 ネットが当たり前になった時代に」は、まず「セルフブランディング」の話から始まる。
本やセミナーもあるのだから、興味を持っている人も多いのだろう。でも、「セルフブランディング」と聞いて「自分をブランド化?」とピンとこなかった僕はこれを読んでちょっとスッキリした。
なるほど、セミナーを受けたり、本を読んだりする人のためというより、セミナーをする人のため、本を書く人のためのものと思えば、すんなり理解できる。

つまり、勝ち組は少数派、それも一握りで、強者が恩恵を受ける。
それがネットの世界だ。

99.9%はクリックする奴隷

「第2章 99.9%はクリックし続ける奴隷」くらいまでは、ある程度ネットの話題を知っている人には、あまり新しい話はない。
ツイッターは「バカ発見器」(2013年7月20日発行の本なので、2013年7月末からのツイッター炎上騒動については触れていない。残念!)から始まって、ZOZOTOWNの送料高い炎上、乙武レストラン炎上や、芸能人のブログ活用からステマ騒動、そしてペニオク事件まで紹介されている。

それが「第4章 バカ、エロ、バッシングがウケる」になると、著者の中川ネットでどれだけおいしい思いをしたかという話から、どのようにすればウケるのか、そして、そのためにはどんな生活をしているかという話になってくる。
同じようにネットでおいしい思いをしたい人には参考になるかもしれないけど・・・

ネットでウケる新12ヶ条、叩かれる新12ヶ条

「第5章 ネットでウケる新12ヶ条、叩かれる新12ヶ条」はなかなか楽しめた。

まずは「ネットでウケる12ヶ条」。

  1. 話題にしたい部分があるものの、突っ込みどころがあるもの
  2. 身近であるもの、B級感があるもの
  3. 非常に意見が鋭いもの
  4. テレビで一度紹介されているもの、テレビで人気があるもの、ヤフー・トピックスが選ぶもの
  5. モラルを問うもの
  6. 芸能人関係のもの
  7. エロ
  8. 美人
  9. 時事性があるもの
  10. 他人の不幸
  11. 自分の人生と関係した政策・法改定など
  12. 「ジャズ喫茶理論」に当てはまるもの

そして「ネットで叩かれる12ヶ条」。

  1. 上からものを言う、主張が見える
  2. 頑張っている人をおちょくる、特定個人をバカにする
  3. 既存マスコミが過熱報道していることに便乗する
  4. 書き手の「顔」が見える
  5. 反日的な発言をする
  6. 誰かの手間をかけることをやる
  7. 社会的コンセンサスなしに叩く
  8. 強い調子の言葉を使う
  9. 誰かが好きなものを批判・酷評する
  10. 部外者が勝手に何かを言う
  11. 韓国・中国をホメる
  12. 反社会的行為を告白する

注目を集めたいブロガーや、炎上させたくない企業の担当なんかは参考になるかも。
この見出しで気になったものがあれば、ぜひ本を読んでもらいたい。

ソーシャルゲームには手を出さない

「第6章 見栄としがらみの課金ゲーム」では、ソーシャルゲームについて書かれている。

以前、ゲームメーカーに勤めていたし、ゲームは好きなのだが、ソーシャルゲームにはまったく興味がない。アドベンチャーゲームやロールプレイングゲームなど、ストーリーを楽しむゲームが好きということが大きい。
ちなみにパチンコやパチスロなども、プレイしている間、終わりまでのプロセスを楽しめないので、興味ない。

ソーシャルゲームは2種類の人を相手にしているという。
「お金でアイテムを獲得する"時間を買う人"」と「"時間を使って"気合いでボタンを何百回も連打するなどし、無料で遊ぶ人」だ。
前者の課金ユーザーはとにかく先に進みたい、そのためにはお金を払うことを厭わない。そして、後者の無料ユーザーはお金は払いたくないけど、時間だけはある人。もちろん圧倒的に多いのは無料ユーザーだ。

なぜ同じゲームを有料でプレイできる人と無料でプレイできる人がいて、成り立つのか?と思ってしまうが、この無料ユーザーが大得意先様である課金ユーザーが気持ちよくプレイするための下僕だという。
だから、無料ユーザーは、無料で遊べるって思ってはいけない。クリックと遊んでる時間すべては運営側の利益になっているという。

これを読むと、やっぱりソーシャルゲームには手を出さない方がよさそうだと思った。

「ネットは特別」と言い続ける人

「第8章 困った人たちはどこにいる」では、ネットを使えることがこれだけ当たり前になった今でも「ネットは特別」と言い続ける人の代表格として「過度な自己承認欲求を持つ人」「"愛国者"たち」「ネット界の『エヴァンジェリスト』」の3つが紹介されている。

「ネオヒルズ族」として話題のアフィリエイター、そして「秒速で1億円稼ぐ条件」の著者である与沢翼氏について書かれていた。
ここでも儲かるのはただ一人。あとは「お布施を払う機械」でしかない。

最後に・・・

著者には申し訳ないが、特別スゴいことが書かれているわけではない。
誰も知らない新しい情報が載っているわけでもない。

ネットの話題に詳しい人なら知っているような話であったり、わかっている話も多いと思う。

でも、ネットを見ていて、なんとなく気になっていたことや、説明できないけど、そこはかとなく感じる違和感。
そういったものが、わかりやすく説明されていて、読んでいるとちょっとスッキリしたり、どうして自分がイヤな感じを受けたのかがわかったりした。

ちょっと頭を整理するのにいいのではないかと思った。