難しいこと抜きで楽しめる「疾風ロンド」

「疾風ロンド」(東野 圭吾)を読んだ。

疾風ロンド(東野 圭吾)

泰鵬大学医科学研究所の生物学部長・東郷のもとに元研究員の葛原から脅迫メールが届く。「研究所から盗み出した生物兵器を雪山に埋めた。雪が解け、気温が上昇すれば散乱する仕組みだ。場所を知りたければ3億円を支払え」
表向きにできない事情があったために警察に相談できない東郷は、研究員・栗林に相談する。

なるほど、「栗林 VS 葛原」の対決の話か・・・と思ったのもつかの間、交通事故で葛原が亡くなったことを栗林は知る。
えっ!? これで、生物兵器の隠し場所を知る人はいなくなったことになる。
雪が解けるまでに、栗林は見つけることができるのか?

ここまでわずか40ページ。ジェットコースターなら、最高地点まで登ったところだ。ここからファーストドロップを駆け下り、あとはいくつものアップダウンを繰り返して、一気に最後まで突っ走る。

帯に「ぶっ飛び!! この冬、最大の興奮!」と書いてあるが、まさにそんな感じだ。

ただ「白夜行」や「さまよう刃」「秘密」のような緻密で完成度の高いミステリーを期待すると、ちょっとガッカリするかもしれない。
これは、2時間読んでいる間、難しいこと抜きで楽しめればそれでよい。そんな作品だと思う。
ちなみに「白銀ジャック」の登場人物が出てくるが、「白銀ジャック」を読んでいなくても気にしなくてよいだろう。僕も読んでいないけど、楽しめた。

たまに何も難しいことを考えずに、楽しめる映画が観たくなる。難しく考えさせられるテーマなんてないし、見終わった後に議論することもない。でも観た人みんなが楽しめる映画。
小説も普段は、プロットがどうだこうだ、トリックがどうだこうだとあれこれ考えてしまうが、たまに難しいこと抜きで楽しめる本が読みたくなる。

そんな時にピッタリではないかと思った。
突っ込もうと思えば、いろいろ突っ込めることもあるだろう。
そんなことを一々挙げるような無粋なことしないで、気軽に楽しもう。