「コンセプトダイアグラムでわかる [清水式]ビジュアルWeb解析」う〜ん、上級者向け?

アクセス解析して、レポートを出しても、まわりや上司に価値が理解されず、活用されない。

これ、Web担当の人なら一度や二度はこのように感じたことがある「アクセス解析 あるある」ではないでしょうか。

分析してレポートしても「なるほど」で終わってしまい、その意味や価値が理解されない。ただレポートを提出するだけで終わってしまい、ビジネスとしての成果につながらない。また、分析しても想定していることが表れるだけで、驚きの新発見がない。など、なんとかこの現状を打破したい。

そう思い、「コンセプトダイアグラムでわかる [清水式]ビジュアルWeb解析」(清水 誠)を読みました。

コンセプトダイアグラムでわかる [清水式]ビジュアルWeb解析(清水 誠)

いきなり「PVやUUのような普通の指標は捨ててしまおう」から始まります。

ページビューやセッション数、直帰率など、多くのアクセス解析ツールが標準的に提供している指標は、「取得しやすい」「歴史的な経緯で広まった」などの理由でツールが便宜的に提供しているだけなので、「Webの基礎知識なので誰もが理解する必要がある」「どんなサイトでも使える万能な指標である」というわけではないという。

確かに言われてみれば、そうなんだけど、急に「明日から服を着なくてもいいですよ」と言われても、全裸で外出するとどうも落ち着かないみたいな感じで、今さらPVを捨ててしまうと、どうも落ち着かない。
でも、アクセス解析でビジネスに貢献し、認めてもらうためには、それくらい発想を転換する必要があるそうです。

というわけで、Webに関わる人たちが整理・議論・共有できるように見える化し、そのゴール実現のために必要な施策と成果をビジュアライズして、ビジネスの成果が出るようにする。というのが、この本の目指す「Web解析」になります。

ゴールを決める

「ゴールを決める」ことは大切で、アクセス解析をしている人なら、設定していると思います。通販サイトなら「注文完了」、BtoBサイトなら「資料請求申し込み」など。
しかし、この本ではそのようなわかりやすく直接的な「コンバージョン」は中間的なゴールでしかないことがほとんどだと書かれています。
例えば、スポーツクラブのサイトの場合、「お試し入会」がコンバージョンと定義されることが多いが、もっと長く広い視点で考えると、継続的に運動することで「やせてキレイになる」「たくましく見えるようになる」「健康になる」などが長期的なゴールになるそうです。

「Web以外で発生するアクションはデータを収集しにくい」などの心配は無用。アンケートや社内ヒアリング、顧客情報などのデータを集めたり、ないデータは新たに取得する方法を考えるなど、工夫次第で何とでもなる。データが取れるかどうかは置いておいて、理想のフロー(ゴールとステップ)を考えましょうということなのです。

Webに限定した中間的な手前のゴールを設定すると、それを増やすための直接的で短期的な施策にフォーカスしがち。オンラインでの注文が増えたとしても、満足度が下がり、顧客離れが起こった場合は、ビジネスの本来のゴールを達成したとはいえない。

例えば、資料請求の申し込みがあって、資料は送るなり、営業担当が持って行くなりするところまでは追えるのですが、そこから先、売れたのか、契約されたのかまでは数字が追えない。そんなケースも多いと思いますが、それじゃダメということです。

いや、仰ってることはわかるのですが、難しいケースもあると思います。ただ、そこをなんとかしないと、Webサイトの中の数字だけを見ていては、いつまで経っても、ビジネスに貢献できず、認めてもらうことはできない。というわけです。

企業視点ではなく顧客視点のゴール

これは今まで考えたことがありませんでした。

普通、ゴールは「認知」「○○の獲得」「売上を○○%UP」など、企業側の視点で考えると思いますが、顧客の気持ちや行動の変化を顧客の視点で表すべきということです。

例えば「当社のシェア拡大」というゴールなら、ユーザーの視点で考えると、「初めて買う時に自社製品を選んでほしいのか」「買い替えの時に継続してほしいのか」「買うだけではなく日常的に使ってほしいのか」「良さを体感してほしいのか」などいろいろな解釈が考えられます。誰にどんな状態になってほしいのか具体化しないと、人によって解釈がブレてしまい、共通のゴールに向かっていくことが難しくなるということです。

ステップもゴールと同じように、顧客を主語で表現すると、一貫した視点で統一感のある流れやステップが作れるということです。例えば、機能の名前でステップを作ると、「サイト内検索」「カテゴリ一覧」「オススメ一覧」など細かいステップが増えがちですが、顧客の視点で考えると「欲しい商品を見つける」の1つのステップでまとめることができます。また、なぜ「サイト内検索」を使うのか?「良さそうな商品を見つける」「あるべき情報が見つからないので困った」など、顧客視点で目的や原因にまで踏み込んで考えます。

これは重要だと思うのですが、慣れるまでピンとこないかもしれません。これだけに限らず、この本は全体的に上級者向けに感じました。

上級者向け?

この本は、初めてアクセス解析に取り組む人が読んだら、ヤケドをするのではないかと思います。

まず「Google Analytics」など、ある程度使っていないと、求めている数字を出すことも難しいかもしれません。

訪問者が「未経験者」なのか「経験者」なのかを判別する必要があるので、以下の条件で絞り込んでください。
未経験者:初めてのサイト訪問(ただし経験者の条件に該当する訪問を除く)
経験者:以下のいずれかの条件を満たした時点以降の訪問

  • ブランド名のキーワードでサイトを訪問した
  • 公式のソーシャルアカウントによる発言またはメールマガジンからのリンクでサイトを訪問した
  • サイトを2回以上訪問した

この条件を見て、どうやって絞り込めればよいか、すぐにわかるくらい解析システムを理解して、使いこなしていなければ、要求されている数字を出すことが難しいと思います。

また、この数字を出せたとしても、この本を読んで理解していなければ、何をやればよいのか、わからないかもしれません。

そこまで理解できても、上に書いたように、正しいゴールが設定できなければ、この本に載っているようなコンセプトダイアグラムを作っても、結局、今までと何も変わらず、ビジネスに貢献できないまま、認めてもらうこともできない・・・ ということになってしまうかもしれません。

自分では理解したつもりですが、正直、ちょっと難しいと感じました。