話題になったあの人の「7日でできる思考のダイエット」

2015年流行語大賞は「爆買い」と「トリプルスリー」でしたが、2015年に話題になった人と言えば誰でしょうか?

五郎丸 歩?
確かにラグビーワールドカップ以降、テレビで観ない日はないくらい、毎日のように見かけましたが、それ以前に毎日話題になっていた人と言えば、佐野 研二郎をおいて他にいないでしょう。

佐野 研二郎

オリンピック エンブレムのパクリ疑惑から始まり、過去の作品と類似しているものを探し出され、連日のようにパクリ疑惑が話題になっていました。

オリンピック エンブレムが発表された当初は、色やカッチリしたデザインがあまり好みではありませんでしたが、さすがによく考えて作られているなと思っていました。

なので、ベルギーのリエージュ劇場のロゴマークに似ていると話題になった時も、たまたま似ていたかもしれないけど、これをパクったとは思いませんでした。

ただ、後に大会組織委員会幹部らによって、2度修正させられた事実を知り、元々のデザインを見た時には、どうしてこれが選ばれたのか? と疑問を感じました。

その後のサントリーのトートバッグのパクリ問題は、どうしてこんなことが起こったのか、理解できませんでした。すぐにバレるだろうし、サントリーくらいのスポンサーの案件なら、撮影するくらいの予算やスケジュールに余裕はあっただろうに、どうして? と疑問を感じました。

そんなわけで、佐野 研二郎の会見を楽しみにしていたのですが、結局、パクリ疑惑直後の「全くの事実無根です」「ものをパクるということをしたことは一切ありません」のあの会見だけで、それ以降直接話を聞く機会はありませんでした。

じゃあ、佐野 研二郎の書いた本でも読んでみるか? と思って読んだのが「7日でできる思考のダイエット」です。

この本は、2010年に刊行された「今日から始める 思考のダイエット」を2013年に加筆、再構成されたものです。

「7日でできる思考のダイエット」というタイトルから、痩せるための本みたいに思われるかもしれませんが、「無駄をなくし、考え方のプロセスや時間管理をあらためて見直すことで、効率を上げてよりいい仕事にするための『考え方のダイエット』本」です。

書いていることはいたってシンプルで、表紙に書いてあるように「単純(シンプル)で、明快(クリア)で、太い(ボールド)柱のあるコミュニケーションで、ムダを削ぎ落とす」という話です。

7日でできる思考のダイエット(佐野 研二郎)

書いてあることを引っ張ってきて、揚げ足をとるように紹介するのは簡単です。

例えば、「口を鍛える。10人の相手に話しかける、プレゼンテーションの極意。」に書いてあるプレゼンのやり方について。

僕はおおげさ過ぎるくらい自信を持って、プレゼンに臨みます。
担当の方に作ったものを見てもらうとき、「すごく良いのが出来ちゃいましたよ!」と自信満々に言います。もちろん、一生懸命に考え、自信があるからこそできるのですが、内心、「シーンとなったらどうしよう......」そんな不安がないわけではありません。けれど、見得を切ることによって、その場の雰囲気がぐっと引き締まりますし、良い意味の緊張感でその場がひとつにまとまります。そして、「じゃじゃーん!」と効果音をつけたり、自分なりの演出を加えながら、プレゼンを始めます。
そうするとみんな「見たい見たい」という空気になるんですよね。

これを紹介して「ほれ、やっぱりアイツはハッタリ(見せかけ)ばかりの男だ」などとツッコんでいくことはできますが、今回それはやりません。文章なんて受け取り方によって、なんとでもねじ曲げて解釈することができてしまうからです。つまり、同じ文章でも「やっぱりコイツはパクリ野郎だ!」とも読めるし、「本当はこの人はよい人だ!」とも読めてしまえるからです。

Amazonのカスタマーレビューを読むと、全部で54件で「★☆☆☆☆」というレビューですが、内訳を見てみると、星5つが3件、星4つ、星3つが0件、星2つが1件、星1つが50件というヒドい結果となっています。
 星5つ:3件
 星4つ:0件
 星3つ:0件
 星2つ:1件
 星1つ:50件
これだけ星1つに集中するレビューはなかなかありません。

おそらく「コイツは悪いヤツだ」「コイツはキライ」と思って読むと、「やっぱりコイツはパクリ野郎だ!」と読めてしまうということだと思います。

だから、先入観なしに読もうとしたのですが、どうしても今回の騒動を思い出さずにはいられないことも書かれていました。

低解像度。100kバイトの写メールで検証。低解像度でも、遠くでも、伝わるビジュアル。」に書かれている仕事の進め方です。

移動中の新幹線や喫茶店でラフスケッチを描き、その絵を写メールで撮影し、それをスタッフに送り、制作してもらうことがあります。「佐野さん、それはとても乱暴な仕事のやり方ですね」、そう言われてしまうかもしれませんが、実はこの作業もシンプルでわかりやすいデザインをするのに、重要なプロセスなのです。
写メールは解像度が低く、微妙なニュアンスまで伝えられません。けれど、ディテールまで見えなくても、ちゃんと伝わるものになっている必要があります。これは、屋外看板や中吊りなど、遠くからでもちゃんと目立っているかを検証することに近いのです。

「7日でできる思考のダイエット」(佐野 研二郎)の中身

もうちょっと余裕のある仕事の進め方をされているのかと思っていたのですが、外出先でラフスケッチを書いて、それをスマホで撮って送って指示を出すこともあるようです。

「ここにフランスパンの写真を載せてみて」と指示を出して、ネットで拾ってきた写真を使ってしまって、そのままOKしてしまう。みたいな感じでサントリーのトートバッグのパクリ問題は起こったのかな? なんて想像してしまいました。

全部読んでみて感じたのは、申し訳ないけど、たいしたことは書かれていません。どこにでも書かれているような話が多く、たまにオリジナリティのある話もあるのですが、「なんだこれ?」と思ってしまうような話でした。

例えば「図解。難しいことは1枚の絵にする。図解して相手に伝える。」に書かれている話ですが・・・

たとえば、今日やらなくてはならない仕事を思う浮かべたときに、「あれもやらなくちゃ! これもやらなきゃ!」と、頭がいっぱいになってしまうことはないでしょうか。これを、一度箇条書きにしてみてください。「あれ? 意外にこんなものだったかな?」と思い、だいぶ気持ちが楽になるはずです。悩み事だって、箇条書きにしてみたら、意外とたいしたことがないかもしれません。
これは、視覚効果のトリックです。例えば、「今日は天気がいいです」ということをテキストにしたら、10文字必要ですが「●(太陽の絵文字)」にするだけで、簡単に翻訳できます。
今日は天気がいいです → ●(太陽の絵文字)

確かに、箇条書きにすると整理しやすいけど、それで悩み事まで解決するのか?
「絵で共有できるものは、絵としてコミュニケーションした方が早い」とか、「絵にすることが出来なければ、そのアイデアは、まだまだムダな部分が多くある」とか、納得しがたいものもありました。

まぁ、これで終わったわけじゃないので、がんばってもらいたいです。