企画開発の仕事をしている人にも読んでもらいたい「横井軍平ゲーム館 RETURNS」

懐かしすぎるクラブニンテンドー「ゲーム&ウオッチ ボール 復刻版」」でも少し触れましたが、ゲーム&ウオッチ、ゲームボーイの父、横井軍平の本「横井軍平ゲーム館 RETURNS ─ゲームボーイを生んだ発想力」(横井 軍平、牧野 武文)を読みました。

横井軍平ゲーム館 RETURNS

この本は1997年に出版された「横井軍平ゲーム館」の復刻本です。

「横井軍平ゲーム館」は、任天堂で商品開発を担当し、数々のヒット作を生み出した横井軍平が商品ごとに開発当時を振り返って開発秘話を語っている名著でした。
残念ながら廃刊となり、入手困難で何万円というプレミアがつき、とても誰でも買えるような本ではなくなっていました。
それが13年ぶりに復刻されたのです。しかも年表もリニューアルし、図版も撮り下ろされたとのことです。

これはもう買うしかないでしょ?

子供の頃遊んだおもちゃ、ゲーム。あれも横井軍平作。

僕が子供の頃、うちは今よりもう少し裕福で、おもちゃもたくさん買ってもらいました。
その中にも横井軍平の作ったおもちゃもいくつかありました。もちろん当時は横井軍平なんて知らないし、誰が開発したかなんて考えたこともありませんでしたが。

あらためてこの「横井軍平ゲーム館 RETURNS」を読んでみると、横井軍平の作ったおもちゃやゲームで遊んでいたか、よくわかりました。
ゲーム&ウオッチ、ゲームボーイ、テンビリオン、ドンキーコング、ドクターマリオ・・・
光線銃カスタム ガンマン、光線銃カスタム ライオンなんていまだに持っています。

アーケードゲームの「ワイルドガンマン」が世界で100台くらいしか売っていないということを知ってビックリしました。僕はこのゲームも大好きで、たまたまよく行くところに置いてあったので、何十回とプレイしましたが、それがその100台のうちの貴重な1台だったとは。

おそらく30代以上のオッサン世代なら、誰でもどれか一つくらい遊んだことがあるのではないかと思います。
そのおもちゃやゲームがどのようにして思いつき、コストを抑えるため、問題をクリアするため、どんなアイデアを駆使したか、それが横井軍平の言葉で語られているのです。
このコンテンツが2,100円で買えてしまうとは安い。安過ぎます。

クリエイター、企画開発の仕事をしている人にも読んでもらいたい

この本は、オッサンが子供の頃を懐かしむためだけの本ではありません。
ゲームが好きな人のためだけの本ではありません。
ぜひクリエイター、企画開発の仕事をしている人、目指している人にも読んでもらいたい。

最先端の技術にも憧れますが、僕はいろんなアイデアで新しいものを作って行くところに夢を感じます。

ファミコンやゲーム&ウォッチ、ゲームボーイの世界では、一生懸命新しいゲームを考えるという姿勢があったんです。向こうが碁を考えたら、こちらは将棋だというようなね。
ところがある程度まで行ったら、やることがなくなってきた。そうすると、テレビゲームは、色をつけたら新しさが出るんではないかという動きになった。でも、これは作る側から言ったら、落ちこぼれなんですね。アイデアをひねり出すんじゃなくて、安易な方へと流れている。だんだん派手さが加わって、スピードも増してきた。CPUも8から16、32、64ビットとなっていくんです。
でも、こんなのはいずれ頭を打つんです。スピードというのは相対性の問題だから、全体がゆっくり動いていても、動かすものもゆっくりなら難しさは出せるんです。
やっぱり、ゲームの本質はアイデアなんで、「アイデアが出てこない」というのは単なるアイデアの不足なんですね。ところが、テレビゲームにはそのアイデア不足の逃げ道があった。それがCPU競争であり、色競争なんです。
私がいつも言うのは、「その技術が枯れるのを待つ」ということです。つまり、技術が普及すると、どんどん値段が下がってきます。そこが狙い目です。例えば、ゲーム&ウォッチというのは、五年早く出そうとしたら十万円の機械になってしまった。電卓がそれくらいしていたわけです。それが量産効果でどんどん安くなって3800円になった。それでヒットしたわけです。これを私は「枯れた技術の水平思考」と呼んでいます。つまり、枯れた技術を水平に考えていく。垂直に考えたら、電卓、電卓のまま終わってしまう。そこを水平に考えたら何ができるか。そういう利用方法を考えれば、いろいろアイデアというものは出てくるのではないか。
私はものを考えるときに、世界に一つしかない、世界で初めてというものを作るのが、私の哲学です。それはどうしてかと言うと、競合がない、競争がないからです。日本企業というのはどんどん海外進出しています。それは、安い労働力で安く作らないと負けるから海外に進出してるわけです。私に言わせれば、そうではない。安く作らないと売れないというのはアイデアの不足なんです。だから、日本国内で作っても高く売れるだけのアイデアを考えたらいいじゃないかというのが私の意見です。それは決して難しいことをしなくても、実に他愛もないことで実現できるのです。

残念ながら、横井軍平はこの本を出した後、1997年に交通事故で亡くなりました。
解説でも「横井さんなら、なんて言うだろう」「横井さんなら、なにを作っただろう」と書かれていますが、そんなこと考えてもしょうがないと思っていても、同じように考えてしまうことがあります。

小学生の卒業文集に「将来、ゲームを作る仕事をしたい」と書いた僕は10年後、その夢を実現すべくゲームメーカーに入社しました。もう10年以上前に辞めてしまい、それからずっと今の仕事をしているわけですが。
そんな僕でもバーチャルボーイだけは赤と黒の画面がどうしても受け入れられませんでした。
緑と黒ならやってたかなぁ・・・