重宝するノウハウがビッシリ「相手に9割しゃべらせる質問術」

「相手に9割しゃべらせる質問術」(おち まさと)を読みました。

相手に9割しゃべらせる質問術(おち まさと)

最近、人と話すのが苦手な若い人が増えているそうな。
メールはできても、一対一のサシでのコミュニケーションとなると、とたんに尻込みする。とくに相手が職場の上司や目上の人、自分の住む正解とジャンルの異なる人となれば、何をどう話していいかわからない。だから上司から飲みに誘われても、「あいつも呼びましょう」と一対二や一対三以上の関係にして、サシのシチュエーションから逃げようとする。もっと割り切った人だと、上司や先輩の誘いも断ってしまう。

社会生活の中で一対一のサシ・コミュニケーションができないのでは使い物にならない。ビジネスマンなら、社内での連絡や報告、上司へのプレゼン、取引先との交渉ごとなど、相手と顔をつきあわせて会話しなければいけない場面ばかり。コミュニケーション能力は、仕事がデキる人の第一条件と言ってもいいくらい。

で、どうすればコミュニケーション上手になれるのか?
その答えが「質問力」
おもしろい話をする必要はない。するべきなのは、相手の話を上手に引き出す質問。
ということだそうです。

何かが違う・・・

てっきり「一対一の日常会話で使える会話術」みたいな本かと思っていたら、何かが違う。

著者のおちまさとさんの本業はテレビプロデューサーですが、十数年前から人に質問することを自分の職業の一つにつけくわえたそうで、それはたんなるインタビューとは違い、芸能人から企業家、政治家まで、さまざまな分野の方々に対談というかたちで質問を投げかけ、その人の素顔を引き出し、紹介する仕事だそうです。
そして、ご自分で"対談師"と名づけ、いまではライフワークにもなっているそうです。

そんなわけで、紹介されているノウハウは、最初に書いたような社内での連絡や報告、上司へのプレゼン、取引先との交渉ごとなどで使うイメージではなく、対談のイメージのものが多く感じました。
日常の会話に活かせるものもあると思いますが、対談にしか活かせないんじゃないか?と思うものも少なくありませんでした。

東日本大震災が起こった後、おちさんのブログに共感したという意見をよくTwitterで見かけました。
でも、残念ながら、そこで紹介されたものは、どれもピンときませんでした。

考え方や価値観など、何かが違うのでしょう。
そのためか、この本を読んでいても、あまり共感することができませんでした。

そもそも、相手の話を上手に引き出せるような質問をすれば、相手が9割しゃべる? ここからして「?」となってしまうのです。
相手が元々話をするのが苦にならないタイプならうまくいくと思うけど、相手も一対一がのサシ・コミュニケーションが苦手なタイプの人だと、いくら質問しても話ははずまないと思うのですが・・・

なんじゃ、そりゃ?

ぼくが公の対談でよく使う第一問目は「自分のこと好きですか?」。

これ、対談ならいいけど、普通の日常会話で聞かれると「えっ?」ってなってしまわないですかね?

「四つの"恋バナ"は欠かせない」で書かれているのがこれ。

だれでも恋の話は、なんとなく語ってみたいものです。しかも初恋、初キス、初デート、それに失恋の四つの恋愛ネタは、いずれもすでに終わった過去のことだから、いくらでも話せてしまう。

えっ? ホントに?

「『わかります』の知ったかぶりは絶対禁物」という話では、こんなことが書かれていました。

ぼくがよく使うのは、「ぼく、その"小さい版"でわかります」という言葉です。

なんじゃ、そりゃ?
そんなこと言われると、調子のいいことばかり言うてるヤツだと思って、「お前の言うてること、大きい版でわからんわ!」と答えてしまいそうです。

「あなたの話を理解していますよ」と伝えるためには、ある程度、能動的なアピールが必要です。相手が語るエピソードに敏感に反応して、「それは、こういうことですよね」と、そこまでの話を要約してあげる。 さらに一歩上をねらって、たんなる要約ではなく「つまり、損して得取れみたいなことですよね」「その戦略は、要するに一人メルトダウン状態ですね」などと、印象的なキーワードでタイトルづけしてあげる。
「そうそう、それ!」
うまいタイトルづけができると、相手がどんどんノッてきます。

僕は人間ができていないのかな?
むしろ、そんなことされると、腹が立つ。ハァ? 何言うとるねん!と思ってしまいます。

「マジっすか?」は魔法の相づちで、おちさんは雲の上の存在のような相手に対しても「マジっすか?」を使うそうです。

「マジっすか?」は、ちょっと"小僧扱い"される言葉です。
「バカだねぇ、おまえは」とあきられつつ、どこか愛される。
とくに、いつもは最上級の敬語でうやうやしい扱いを受けている立場の人や、なんとなく怖がられて敬遠されがちな人からは、かえって新鮮でおもしろがられることもあります。
「マジっすか?」
「おう。マジ、マジ(笑)」
相手もヤンチャな気分でノッてくだされば、会話が弾むこと間違いなしです。

僕は雲の上の存在でないせいか、「マジっすか?」なんて言われてもおもしろいと思えないし、会話も弾みません。
逆に、雲の上の存在のような相手に「マジっすか?」なんて言う気もしないし。
だからおもしろがられることもないだろうけど・・・

コントかよ!

後半になると、「それ、どうやってやるねん?」とか、「コントかよ!」ってネタも出てきます。

それが「雑談のなかに質問の伏線を仕込む」に書かれていたことです。
いい映画には、いい伏線が必要という話があり、ディズニー映画にはどのタイミングで伏線を張り、どのタイミングでそれを解き明かせば観客が楽しめるかいついて、しっかりとしてメソッドがあるという話のあとに書かれているのがこれ。

会話もディズニー方式でいけたらいいなと思います。
「えっ、おちさん。いつまでも、こんな意味のないくだらない話をしていていいの?」
などと相手を不安にさせておいて、じつはその雑談のなかにいろいろな伏線を張り巡らせておく。そして終盤なって、ばらまいた伏線をどんどん回収していくのです。

どうやって、普通の日常会話でそんなことやるねん? と思うのは僕だけなのでしょうか?

「相手の顔色を見て『言葉尻』をとっさに変える」は驚きました。
例えば、相手が関西人の場合。
相手との距離を縮めようとして、自分も阪神タイガースファンだと言おうとした時、「ぼく、阪神好き......」まで言ったあたりで、相手の顔が曇るったことを察知したら「好き......じゃないんですよ〜」と、土壇場で言葉尻をムリやりかえることができる。
ウソみたいな話ですが、本当にそう書かれてあります。
思わず「コントかよ!」とツッコミそうになりました。

「○○について聞きたいんです」→「○○について聞......くなんてヤボですよね」
「ぼく、その時計と同じものもってます」→「同じものもって......ないんです。うらやましいなぁ」

んな、アホな・・・ と思ったのですが、これを読んで本当に参考になった人いるのかな?

参考になったこと

いろいろ書きましたが、もちろん参考になったこともいくつかあります。

「質問づくりの基本は『リスペクトの精神』」に書かれているように、質問する時、相手に対する尊敬と理解が一番大切なのではないかと思いました。

「"そもそも力"で相手の核心に近づく」なんかは日常会話でも使えそうです。

「そもそも、なぜこの会社に入ったのですか?」
「そもそも、この作品の発送はどこから生まれたんですか?」
このような「そもそも」で始まる問いは、その後の会話をどんどん広げてくれる、かなり使える質問です。

「過去ではなく"いま"をほめる」これは気づかずにやってしまいそうです。

ある程度の年齢の人に向かって、「むかしはモテモテだったんでしょ」とか「若いころはさぞ美人だったんでしょうね」などと言う人がいます。
本人はほめてつもり。でも、言われたほうにしてみれば、「じゃあ、いまはどうなんだよ!」と内心ムカッとします。「あっ、いまも十分おきれいですが」などと、あわててフォローしても、あとの祭り。
人は"いま"をほめられたい生き物なのです。過去形でほめられても、あまり嬉しくないものです。

気をつけないと。

そんなわけで、日常会話には使えないネタも多いと思いますが、対談される方には重宝するノウハウがビッシリ詰まっている本ではないかと思いました。