「半沢直樹」最終回の続き「ロスジェネの逆襲」がおもしろい

9月22日の最終回ではついに平均視聴率40%を超えた「半沢直樹」。
見事に有終の美を飾ったわけだが、あの終わり方にはモヤモヤした人も多かったらしい。

半沢直樹

ちなみに原作では、ドラマのように中野渡頭取から直々に辞令が出ることもなく、内藤部長と人事部長とに呼び出されて報告される。
しかも、どのような事情でそうなったかの話もあるので、読者も半沢直樹が処分されたように受け取ることもない。だから、それほどモヤモヤすることもなかったはずだ。

しかし、「やられたらやり返す。十倍返しだ! ドラマ「半沢直樹」は、原作「オレたちバブル入行組」よりイイ!」や、「ドラマ「半沢直樹」を楽しんだら、原作「オレたち花のバブル組」を。もはや別モノだ。」で書いたように、このドラマは原作を忠実に再現するのではなく、よりドラマチックにアレンジしている。

だから、ドラマの最後もスッキリ楽しい気分で終わる最終回ではなく、渡真利と近藤の「半沢は出世間違いなしだろ?」みたいなネタ振りをして、視聴者に期待させておいて、「えっ? 出向?」「えっ? これで終わり?」という天国から地獄に一気に突き落とすような見せ方をして、あえて視聴者をモヤモヤ気分にさせて、続きを期待させるエンディングになっていた。

みんな知っていると思っていたのだが、原作はまだ「ロスジェネの逆襲」が続いていることを知らない人が意外と多かったことに驚いた。

というわけで、「ロスジェネの逆襲」(池井戸 潤)を読んだ。

ロスジェネの逆襲(池井戸 潤)

オレたち花のバブル組」で東京中央銀行の子会社、東京セントラル証券に出向した半沢直樹は、営業企画部長となっていた。
ある日、IT企業の電脳雑伎集団の社長・平山から、ライバルの東京スパイラルを買収したいと相談を受ける。アドバイザーになれば、巨額の手数料が転がり込んでくるビッグチャンスだったが、親会社の東京中央銀行・証券営業部にアドバイザーの座を奪われる。
このままでは責任を問われる窮地に陥った半沢直樹は反撃に出る。そして、東京中央銀行vs東京セントラル証券、電脳雑伎集団vs東京スパイラル、東京中央銀行・証券営業部vs半沢直樹の闘いに・・・

いや〜、おもしろかった。
ただ、今回も人によってはやり過ぎと感じるかもしれない。

そこが「半沢直樹」シリーズのおもしろいところだけど、この本を読んだ人が影響されてマネをしたら、取り返しのつかないことになるだろう。

半沢が部下の森山に言った仕事についての話。

仕事は客のためにするもんだ。ひいては世の中のためにする。その大原則を忘れたとき、人は自分のためだけに仕事をするようになる。自分のためにした仕事は内向きで、卑屈で、身勝手な都合で醜く歪んでいく。そういう連中が増えれば、当然組織も腐っていく。組織が腐れば、世の中も腐る。

これがこの「半沢直樹」シリーズ通してのテーマだろう。

どこにでも、こういう内向きの仕事をしているヤツがいる。
浅野支店長、大和田常務みたいに・・・

こんなヤツらがいるから組織も世の中も腐る。
許していいのか? いや、断じて許さん!
やられたら、やり返す。100倍返しだっ!

と、本当にやってしまうと、組織にいられなくなってしまうだろう。
結局、何もできないでいる自分にモヤッとしてしまう。
近藤ですら、自分を変えていったのに・・・
いやいや、あれも小説の話で、実際の話じゃないんだけど・・・っと、やっぱりモヤッとしてしまう。

最後に、バブル世代の半沢が、ロスジェネ世代の森山に、こんなことを言っていた。

どんな時代にも勝ち組はいるし、いまの自分の境遇を世の中のせいにしたところで、結局虚しいだけなんだよ。ただし、オレがいう勝ち組は、大企業のサラリーマンのことじゃない。自分の仕事にプライドを持っている奴のことだけどさ。

どんな小さな会社でも、あるいは自営業みたいな仕事であっても、自分の仕事にプライドを持てるかどうかが、一番重要なことだと思うんだ。結局のところ、好きな仕事に誇りを持ってやっていられれば、オレは幸せだと思う。

ドラマ化される時は、またこのあたりの話はなくなってしまうのかな?

原作では、団塊の世代の大和田常務、バブル世代の半沢、ロスジェネ世代の森山と分かれているのだが、ドラマでは半沢直樹役の堺雅人(39才)より、大和田常務役の香川照之(47才)の方がバブル世代だから、あまり「○○世代」ってやりにくいのかな?

倍返しはできないけど、自分の仕事に誇りを持ってやっていこうと、あらためて感じた「ロスジェネの逆襲」だった。