ファンに届け!「明日のプランニング 伝わらない時代の『伝わる』方法」

「情報の『捨て方』 知的生産、私の方法」読んでみてわかった。この本こそ...」で、このようなことを書きました。

毎日、インターネットやスマホから消費しきれないほどたくさんの情報が入ってきます。
「どうやってこれらの中から必要な情報、不要な情報を取捨選択すればいいのだろうか?」
多くの人が気になっているのではないかと思います。

あれ、違っていたかも。

「明日のプランニング 伝わらない時代の『伝わる』方法」(佐藤 尚之)を読みました。

明日のプランニング 伝わらない時代の「伝わる」方法(佐藤 尚之)

どうやら、みんながみんな、消費しきれないほどたくさんの情報を浴びているわけではなさそうです。

「最近なんだか伝わっている手応えも実感もない」「広告もコンテンツも効いてる気がしない」
では、どうすれば伝えたい「情報」が伝わるのか。そんな話でした。

「砂一時代」と「砂一時代以前」

2010年の1年間で、世界中の砂浜の砂の数と同じ1ゼタバイトの情報が流れたという。
「伝えたい情報はたった砂の一粒」ここから、この本では「情報"砂の一粒"時代」(=砂一時代)と呼んでいます。

砂一時代の生活者の情報環境は、情報が溢れていて、とても伝えることなんてできそうにありません。

一方、ネットに日常的に触れていない人も、まだまだたくさんいるそうです。

2014年の時点で、日本の総人口約1億2700万人のうち、「ネットを毎日は利用していない人」が約5670万人、「検索を日常的に利用していない人」が約6000万〜7000万人、「ソーシャルメディアを利用していない人」が約7000万人もいるのです。

それって、子供と老人? と思ったのですが、そうでもないようです。
彼らのことを、この本では「砂一時代の前、情報がそれほど多くなかった時代」から「砂一時代以前の生活者」と呼びます。

ここで大切なのは、「砂一時代の生活者」と「砂一時代以前の生活者」を分けるのは、年齢ではありませんし、ネットの使用・不使用でもありません。

砂一時代以前の生活者にもソーシャルゲームやLINEなどネットを利用している人もいます。でも、その場合、そこから大量の情報を摂取していませんので「砂一時代以前の生活者」となります。「情報環境」で「砂一時代の生活者」と「砂一時代以前の生活者」を分けています。

もちろん、どちらが良くて、どちらが悪いということではありません。ライフスタイルの違いです。

ここをきちんと切り分けず、ごちゃ混ぜにしてプランニングしている人が多い。ということです。
例えば「テレビでインパクトが強いCMをやって、それをSNS上でバズらせよう」こういうプランニングだと、SNSをよくやっている砂一時代の生活者はあまりテレビを見ていない。だから、CMを見る可能性は少ない。もし見たとしても、すぐスルーする。となってしまいます。

「マスベース」と「ファンベース」

では、どうすればそれぞれに伝わるのか?
砂一時代以前の生活者は、情報が溢れる前のスタイルなので、従来のマスメディア中心の「マスベース」プランニングが十二分に機能します。問題は、砂一時代の生活者です。

テレビも新聞も、ネットですら伝わらない彼らに唯一(?)伝わるのが「友人知人」です。つまり、友人知人を介して情報を伝えるのです。

とは言っても、これは簡単な話ではありません。「言ってもらおう」「バズらせよう」というような意図や媚びが匂うと、情報リテラシーが高い人ほど警戒し、口を閉ざします。

ツイートしてくれたらサービスします的な企画もたまにあり、まんまとツイートしてしまう生活者も意外といるが、そのツイートした人の友人知人は「ははん、広告だな」と見抜き、白けてスルーする。露出は増えるかもしれないが、効いていない。それどころか、最悪の場合その企業やそのツイートをした人自身の信用にも関わる場合があるくらいである。

これを読んだ時、ドキッとしてしまいました。

砂一時代以前は「マスベース」で、アテンションとインパクトが大事なのに対して、砂一時代は「ファンベース」で、インタレストとシンパシー、つまり、興味関心と共感が大事となります。

興味関心がある人(=ファン)に伝える。良い情報、新しい情報を一番に届ける。それがファンベースのプランニングです。

例えば「新規入会キャンペーン」みたいな、まだ使ってくれていない生活者に向けたキャンペーンは、すでに長く入会してくれているファンを無視した典型的な「砂一時代以前」のやり方です。

砂一時代の生活者に伝えたいなら、長く愛用してくれているファンを優遇して、彼らから友人知人に会員になるメリットが伝わっていくようにプランニングしなければいけません。

今まで伝える仕事に携わっている人は「新規顧客」を取り込むのが、マーケティングの目的でしたが、砂一時代の生活者においては、ファンベースで考えなければいけないという話です。

最後に

最初に書いたように、この本を読むまで「みんながみんな、毎日、インターネットやスマホから消費しきれないほどたくさんの情報が入ってきている」と思い込んでいました。

言われてみれば「確かにその通り」と納得できる話ばかりでした。

ザックリ全体の流れだけ書きましたが、伝えることが仕事の人はもちろん、それ以外の人にも、学べることがたくさんある本ではないかと思います。

ぜひ読んでみてください。